Show Reports

サマーソニック2000(8月6日・大阪)

 クリエイティブマンが主催して開かれた、野外ロックフェス、サマーソニック。東京、大阪での同時開催、しかも1日、2日目それぞれの出演者を総入れ替えする、という面白い試みがなされている。大阪での、この手のアーティストを集めたフェスティバルはおそらく初めてだろう。会場は、WTCオープンエアスタジアム。埋め立て地にショッピングセンターやホテル、オフィスビルなどが散在している地域だ。会場すぐ近くの「ATC」というショッピングモールや、ステージ裏にそびえ立つ「WTCコスモタワー」には家族で何度か来たことがあるし、「ステージ2」として使われていた見本市会場「インテックス大阪」にも、仕事がらみで毎年訪れている。こういった「その日のうちに電車で帰れる」、いわば「都会型」のフェスはありがたい。この会場でなければ、おそらく見に行くことはできなかっただろう。

 さすがに両日共、というのは嫁の許しが出ないだろうと思い、6日のみ参加することにした。東京では5日のメニューと同じ、ということになる(ただし、ステージ2の出演者は若干異なる)。これからレポートをお送りするわけだが、なにしろぼくの偏狭な趣味趣向を通して見た印象なので、いくつかのバンドについて、相当きついことを書くことになりそうだ。ファンの方はどうかあまり気を悪くされないように。

 「コスモスクエア」駅で降りて会場に向かう。次の駅の方が近いのだが、入口が駅とは反対側にあるので、いずれにせよかなりの距離を歩かなければならないようだ。1番目のバンドはパスさせてもらったので、ちょうど2番目のミューズから見ることになる。予報通り天気はいい。というかよすぎ。すでに気温はかなり上がっており、会場へ着くまでにどっと汗が噴き出してきた。ステージの背後にはバカ高いコスモタワーがそびえ立ち、なかなか見栄えのする舞台となっている。向かって右手には、こうしたでかい会場にはつきもののスクリーンが用意されていた。

■MUSE
 それほどキャリアが長いわけでもないし、メンバーが若いにもかかわらず、かなり高い評価を得ているUKのバンド。あくまでぼくの印象だが、このバンドは良くも悪くもギター&ヴォーカルの人(名前知らないのです、すいません)の個性がすべてではないだろうか。英国らしい知性を感じさせるキャラだが、ジョン・ライドンが持っていたような「悪意」を、どこかに隠し持っているように感じて、そこが気に入った。サウンド的には強度に哀愁を帯びたメロディーと、「ニルヴァーナ以降」のUS的ヘヴィネスが同居している、といったもので、けっこう面白かった。すでに独自の世界観を持ったバンドなので、これからその持ち味をどう発展させていけるか、だろう。ギターを放り投げたり、といったパフォーマンスもなかなか楽しかった。

■REEF
 先日公開した「Crazy Strawberry-Lover」第一回目の対談の中で、ぼくは「TシャツにGパン姿の、親しみやすい近所のお兄ちゃん」的バンドについて言及した。このリーフというバンドもレディングフェスに出ていたことを思い出したのだが、こういうバンドがたまらなくイヤなのだ。明るくて、楽しくて、裏表のない、一緒に盛り上がれる「だけ」のロック。そこにはロックの持ついかがわしさや、狂気、フリークネスといったものは一切認められない。少なくともぼくがロックに求めているものは、このバンドのステージにはなかった。客はみんな盛り上がっていたが、2曲目が始まった時点で見切りをつけて、ステージ2を覗いてみることにした。

 ステージ2へ移動。しょうがないのかもしれないが、この、メインステージからステージ2への移動にけっこう時間をとられる。とちゅうステージ裏手にあるコスモタワーに立ち寄ったが、暑さにやられてメインステージを抜け出してきた客が1階ロビーのあちらこちらに寝転がっている風景を目にした。床が冷たいものだから気持ちいいのだろうが、ほとんどの人が寝転がって休んでいる、というよりは「眠ってる」のだ。よほどお疲れの様子。

 10分ほど歩いてステージ2のあるインテックス大阪につく。インテックス大阪は、他の見本市会場と同じく、いくつかのホールから構成されている。当日、ライヴをやっているのとは別のホールで、子供服チェーン店のイヴェントが開催されており、会場ではベビーカーを押した子供連れと、腕に入れ墨を入れた上半身裸のムサい男達が混在する、一種異様な風景が展開されていた。ライヴ会場となったホールはかなり広いのだが、しっかり冷房が効いており、外のメイン会場と比べるとまさに「天国と地獄」だ。

 ライヴをやっている時間ではなかったようなので、売店でビールとペットボトルの飲料水を買い、しばらく休憩してからメイン会場へ戻った。メイン会場では次のマッド・カプセル・マーケッツの準備が進んでいる最中で、バンドのTシャツを着たオーディエンスがステージ前に集結し、会場のテンションがじわじわ上がっていくのが感じられた。

■Mad Capsule Markets
 このバンドのキャリアも相当長いと思うが、ぼくは機会がなくてきちんと聴いたことはなかった。例の飲料水のCMくらいだろう。ヘヴィなギターサウンドにラップが乗る、といったスタイルのバンドは、今ではいっぱいいるが、このバンドを他と明確に区別しているのは、そのテクノ的要素だろう。非常に面白いサウンドだと感じた。メタリックで硬質なギターの音、疾走感のあるハイパーなリズム、そこにキャッチーなメロディーが時折顔を出す。気に入った。客のボルテージが一気に上がり、ダイヴ、モッシュも続発する。こうしたイヴェントで、日本代表バンドの一つとして、外タレとタメはるにふさわしいバンドだと言える。

■311
 続いてはUSの311。ミクスチャー系という話を聞いていたので、少なからず期待していた。しかし。ハードなギター、ターンテーブル、ラップ、という「いかにも」のスタイル。最近では山ほどいるこの手のバンドの中で、「他とは違うぞ」という個性も感じられない。ライヴパフォーマンスも、先ほどのリーフと同じく、明るく、楽しく、一緒に盛り上がるだけの脳天気なもの。だいたいヘラヘラ笑いながら演奏しているのが気にくわない。サウンド的には、80年代ならともかく、今の時代にわざわざこんな音を聴きたいとは思わない。ものごとには、いい面と悪い面があるというが、RHCPが売れたことの最大の弊害は、こうした薄っぺらな「ミクスチャー」バンドの氾濫だろう。さっさと見限ることにする。よし、ステージ2にナンバーガールを見に行くぞ。

 ステージ2へ移動。しかしイールズが出演できなかった影響で、タイムテーブルがすっかりずれこんでしまっている。ナンバーガールの出演はかなり後になるようだ。しょうがないので、この時間を利用して休憩し、昼食をとることにした。

 メイン会場へ戻る。ぼくのブロックは「RB」という、ステージに向かって右よりの指定だったのだが、この頃になると混雑してきてチェックも甘くなってきていた。なに食わぬ顔をして中央よりの「RA」ブロックへ入る(ごめんなさい)。少しだけ日差しが弱まってきた感じで、風も出てきた。それでもひっきりなしに水分補給をしていないと、すぐに喉がカラカラになってくる。

■Arrested Development
 「ファミリー」だ。ぼくがこのユニットのステージを見て強く感じたのはその事だ。彼らのことはよく知らないが、ステージに出てきた「グランパ」の存在や、ステージ脇にいっぱいいた、メンバーの小さい子供達の姿を見るにつけ、その言葉が何度も去来した。そして、彼らが表現したいことも、おそらくそれなんだろうと思う。ぼくらがとっくにどこかへ置き忘れてきた、しっかりした家父長制の生きている世界だ。たとえば偶然知り合ったアフリカの友達の家に招待され、そこで催された宴を見てる、といった雰囲気だった。家族、親族のうちから次々と芸達者が出てきて歌や踊りを披露してくれる。「グランパ」は、揺り椅子に腰掛けて、「若いやつも、がんばっとるのう」と行った風情でながめている。目上の者に対しては、みんなきちんとリスペクトを払っている。

 ヒップホップというと、とかく強面のイメージが先行するが、彼らのステージはまったく違う。見ているうちに、自然と顔がほころんでくるような、ピースフルなステージだ。ヒップホップだとかブラックミュージックだとかアフリカだとか、そういった記号的な見方を凌駕して、ぐっとこちら側に迫ってくるような、パワフルな、それでいて肩の力の抜けたすばらしいショウだった。気持ちよく踊ることができた。ステージ脇でマッド・カプセル・マーケッツのメンバーが、にこにこしながら見ていたのが印象的だった。

■Dragon Ash
 ドラゴン・アッシュのショウをどう見るか、というのはむつかしい。彼らはあまりにもメジャーであり、こうした洋楽のバンド/アーティストがメインのイヴェントの中では、その立場がかなり微妙だと感じていたからだ。客としての正しい見方は、「ドラゴン・アッシュ」という名前に関係なく、いい演奏なら拍手を送り、ショボい演奏ならブーイングを返せばいいのだ。よし、お手並み拝見といこうじゃないか。

 しかし、演奏が始まってみて驚いた。客のノリが、完全に「何でもOKのファン」のノリになっている。いい演奏だからノッてるんじゃない。「あの」ドラゴン・アッシュだからノッているのだ。待てよ、お前ら全員DAのファンだったのか?そんなんでいいのかよ。それに降谷建志のカッコが、なんというか「いかにも」で、バンダナを巻いたその姿は、降谷建志本人というよりも、むしろよくできたモノマネのようにしか見えなかった。そして彼のラップが、以前シングルで共演したZEEBRAのような、ダミ声のハードラップスタイルに変化している。それがまた、どうにも様になっていないというか、背伸びしているようにしか感じられなくて、すっかり拒否反応を起こしてしまった。

 「うーむ。これはどうしたものか…」と腕組みをして見ていたら、後にいた白人の女が、「腕組みなんかしてないで、踊りなさい」と言ってきた。明らかに酔っていたので、「ああ、分かってる、分かってる」と適当に流しておいたら、なんとその女、いきなりケツにケリを入れてきやがった。「てめー!そこまでやるか。踊りゃいいんだろ、踊りゃ!」と、その女を巻き込んでむちゃくちゃに暴れ回っていたら、連れの、これまた白人の女がえらい剣幕で怒ってきた。「だってこいつ、ケツ蹴ったんだぜ」と文句を言うと、謝ってきたので、こっちも謝って仲直りした。その後はけっこう打ち解けて、その「アス・キック」女などは、少し後に水を切らしたので持ってないかと聞くと、わざわざどこかからスポーツドリンクを探し出してきてくれた。ありがとう。

 アス・キック女の言いたいことも分かる。せっかくのお祭りなのだ。むつかしく考え込んで見ているなんてバカげている。それに演奏(といってもほとんど打ち込みが主だったが)自体もそれほど悪くはなかったのだ。「しかし、やはり…」などと逡巡しているうちに、もうどうでもよくなってきてノリノリで踊ってしまっていた。そのうち「周りの客、ノッてねえ!」と逆ギレしてダイヴしたが、誰も受け止めてくれなかった。みんなひどいよ。

 ほとんどはハードな曲だったが、以前のメロウな曲もやっていた。色々言われているが降谷建志の本質は、その青臭い「青春野郎」的なメッセージにあるのだろうし、実際ステージを見て、おれはこの人のそういう面が嫌いではないんだな、と感じた。

 ドラゴン・アッシュのステージが終わった頃は夕暮れ時で、客席後方のビルに、美しい夕日が沈んでいくのを見ることができた。次のJBに向けて、じわじわ気分が盛り上がってくる。

■James Brown
 JBのステージは、8,9年前に大阪城ホールで一度見ている。初期のライヴ盤も持っていた。この日のライヴもそうだが、この人のステージは基本的にまったく変わっていないようだ。ジングルのようなメロディーで曲をつないでいく構成や、マントショー…。つまりは、60年代の時点で彼のショウはすでに完成されていたということであり、よくある音楽性の変遷や、流行を取り入れたり、ということもない。JBはJBであるだけで充分なのであり、なにも小細工を施す必要がないのだ。それにしてもこれだけ長い間一貫してクォリティの高いショウを提供し続けているという事実には、驚嘆せざるをえない。詳しくは知らないが、おそらく還暦は迎えていそうな感じだ。にもかかわらず、まったく年齢的な衰えを感じさせない。

 バンドメンバー、コーラス、ダンサーを含めて、総勢20数名の大所帯。バンドについてもあまり詳しくないが、みんなうまいし、芸達者だ。JBにいきなり「ソロをやれ」と指示されてもすぐに対応できなくてはいけないし、楽器とメイクラヴしたり、楽器なしでソロをやったりしなければならない。おそらく相当厳しい規律が支配しているのだろうし、テクニック的にも、常に高いレベルを維持していなければ、JBのバンドの一員であることはできないのだろう。それはバンド以外のスタッフとて同じ事だろう。ショウの間中、JBは終始にこやかだったが、途中ライティングが打ち合わせと違っていた箇所があったようだ。するとJB、演奏を途中でやめさせ、なんとその場でダメ出しをしたのだ。静かなトーンだったが、その時のJBは、とても、とてーも怖かった。

 音楽性について。ショウの、ラスベガスライクな外見に騙されてはいけない。JBの音楽は、そうしたイメージからは、どうしようもなくはみ出してしまうほど、猥雑で、セクシーで、グルーヴ感に満ちている。ファンク、ソウル、いずれもJBが作り出したものだが、いまだに誰もJBを越えられない。長くがんばっているロートルのミュージシャンを面白がる、といったアプローチではなく、今の時代に充分通用する、先鋭的な「ロック」であり続けていると感じるのだ。JBは知っていても、その音楽をきちんと聴いたことのないファンは多いと思う。しかし、ぜひ一度、ベスト盤的なものでいいから聴いてほしいと、心から思う。RHCPのファンならなおさらだ。誰にもマネできないカッコよさが、そこにはある。

 それにしても客のノリが悪い。全然リズムに乗れてねーじゃねえかよ。リズム感悪いんじゃないの?縦ノリでしか踊れないんじゃ、ちょっと情けないぜ。

 今回残念だったのは、スタッフや、機材のトラブルが目立ったことだ。先ほどのライティングミスの他にも、何度かミスがあったようだし、ステージ終盤の、いちばん盛り上がるところでメインスピーカーからまったく音が出なくなってしまったのだ。なんとか客の方で盛り上げていたが、ステージの出来以外の、こうした要素で盛り上がりを欠いてしまうのは、残念という他ない。

 個人的には、もっとヒット曲を連発してほしかったし、JB以外のシンガーの歌が多すぎるのでは、という印象をもった。それでも、愛にあふれたすばらしいステージだった。ありがとう、JB。

 JBのステージがだいぶ押してしまったために、次のジョン・スペンサー・ブルーズ・エクスプロージョンのステージが始まったのは、終演予定の9時に、あと15分ほどに迫った時間だった。嫁には10時までには帰ると約束しているので、残念だがJSBXのショウの途中で抜けさせてもらうことにする。終演後の混雑もものすごいことになるのが予想できたし。

■Jon Spencer Blues Explosion
 そういった事情で、客席後方からスクリーンを通して、15分ほど見ただけの彼らのライヴだったが、すごくよかった。「mine-D's Fanatic World」に書いた、昔CDを持っていたバンドの中に、プッシーガロアがある。実は名前を思い出せなくて「bunbun's homepage」のbunbunさんに思い出させてもらったりしたのだが、昔は相当好きで、入れ込んで聴いていた。JSBXの前身となったバンドだ。

 プッシーガロアのロゴマークがあったのだが、ローリング・ストーンズの唇と、昔活躍していたドイツのアインシュツルツェンデ・ノイバウテン(でよかったかな)というバンドの、人形のようなロゴを組み合わせたものだった。音楽もロゴそのまま、という感じで、ストーンズっぽいルーズなロックと、ノイバウテンのようなメタルパーカッションがからむ、カッコいいものだった。JSBXはやや洗練され、プッシーガロアのような猥雑さは少し影を潜めているようだが、やはりいい。ヴォーカルスタイルはプレスリーを感じさせる。

 白人で、レザーのパンツをはき、長髪で、ギターを低く持ってストレートなロックをやる…普通に考えればこれらはすべて、負の要素でしかない。なぜなら、そういったイメージはとっくの昔に陳腐化して久しいからだ。しかし、こういった負の要素を逆手にとって、強引にねじこんでしまうだけの迫力と、パワーがある。正直、「今の時代にこんなやり方もあるのか」と感嘆したし、そういう意味で貴重なバンドだとも思う。ライヴパフォーマンスも、非常に力が入っていて思わず引き込まれた。

 存在自体がロックというか、奇をてらわない、そのままのカッコよさがある。セクシーだし。おれが女だったら濡れてるぜ、ホントに。

 さて、9時を過ぎたので、泣く泣く会場を後にする。申し訳ない、ジョン・スペンサー。

 今回、初めてこの手の野外ロックフェスに参加したわけだが、十分に魅力を堪能できたと思う。ヘトヘトに疲れたし、服は泥だらけだし、右半分だけ日焼けしてしまったりしたが、もしまたこういうイヴェントが催されるなら、ぜひ行きたいと思った。行ったことはないがフジロックなんかもきっと楽しいだろうな、と想像する。暇がないし、体力的、経済的な事を考えてもフジロックはさすがにむつかしいかとは思うが。

 駅に向かう道中、携帯電話が鳴った。出ると嫁の声で「まだやってんの?帰りに明日の朝食のパン買ってきてや」。一気に現実に引き戻された。

個別リンク:http://www.mine-d.com/article/archives/2004/06/200086.html|