Show Reports
ジェイムズ・ブラウン(2003年10月9日フェスティバルホール)
「この手の顔って、犯罪やるか音楽やるかのどっちかしかないですよね」。
開演前、パンフレットに載っている写真を見ながら、同行したガッツちょろ松さんはしみじみとそう言った。ジェイムズ・ブラウンは誰でも知っているし、ソウルのゴッドファーザーであり、ミスター・ダイナマイトであり、ハーデスト・ワーキングマン・イン・ショウ・ビジネスであり、ソウル・ブラザーNo.1であり、その世界における成功者で、いわば「セレブ」なのだが、ぼくが今回のショウをみて感じたのは、なにかしら「ヤバイ」雰囲気だった。JBのしゃべり方、トーンは、下手するとスラム街にたむろしている「悪いこといっぱいしてますよ」的不良少年のそれにしか聞こえなかった。JBは実際犯罪歴もあるワケだが、実のところそうしたオーラこそが、「Funk」と呼ばれるものなのではないか…そう思ったりもした。
しかし、JBのショウはそれ自体が長い歴史を有しており、全体を通して非常に礼儀正しく、規律の行き届いた空気が支配している。それは、今回を含めて3回しかショウを見ていないぼくでも、よーく分かった。mojoさんのお友達から、JBのショウではバックバンドのメンバーが演奏ミスをした場合、罰金が科せられるらしいという話を聞いたのだが、客として見ているだけでも、各メンバーの間に、非常に張りつめた空気を感じ取る事ができる。常にJBの動きをチェックしてタイミングを逸しないよう、神経を集中していなければならないのだろう。もちろん、高い演奏力が要求されるのは言うまでもない。
だが、それはけしてJBが独裁的だという事を意味しないのだと思う。バンドメンバーもスタッフも、ゲストシンガーもすべて自発的にJBに対する最大限のリスペクトを有しており、いわば「やんちゃ坊主」的JBの言動を暖かく見守り、心から愛しているように感じられた。そうした暖かい雰囲気はしっかり伝わってきた。こうした、厳しさと親密さが極限において両立するような結びつきこそが、JBと彼のバンドの神髄なのではないか。メンバーがソロをやった後はしつこいくらいに名前を連呼し、拍手を強要するJB、前に出てソロを弾くギタリストのコードがからまないよう、裏方みたいにコードをさばくJB(「世界の」JBが普通やるか、そんなこと)…。つまるところ、JBと一緒に演奏するという事は、もはや単なる「仕事」ではなく、全人格的に自分をさらけ出し、お互いの「ソウル」をぶつけあうような体験なのだろう。なんというか、「修行」のようなものなのだろう。宗教的とさえ言っていいかもしれない。それだけすごい事なのだ、きっと。
日頃「ロック」のライヴにばかり行っている身からすれば、注文をつけたくなる事はいっぱいあった。ショウの流れ、盛り上げ方においてはやや抑揚がなく、もっと「入っていきやすく」してくれればよかったと思ったし、各メンバーのソロも長すぎる。ほとんどの場合、オリジナル3分の曲を20分くらいに引き延ばして演奏していたような印象だ。ゲストシンガーに割いた時間も長すぎる。客はJBを見に来ているのだから。だが、思ったのは「有名な曲ばかりを手っ取り早くがつがつ貪るような見方」は、JBのショウにおいては完全に否定されていたという事だ。「世界一白いタキシードが似合う男」ダニー・レイの慇懃無礼なもったいぶったMCや、各メンバーの長いソロ、メンバーとJBとのショートコント的なやりとりすべてを含めて、ショウ全体を通してゆったりと落ち着いて楽しむ事が要求されるのだ。
だが、けして「ディナーショウ的」な予定調和に陥っていないところがJBの凄いところだ。もしそうなら、10代の若い客から子供と同伴で来ている客、JBと同い年、いやそれ以上の年齢の客(実際白髪で腰の曲がったおばあちゃんの姿を見た)が同じ場所に集い、楽しめるようなショウにはならなかったはずだ。以前にも書いた事だが、「かつて素晴らしい音楽を残したロートルアーティストの慰み」などではけっしてなく、まさに「現在進行形のロック」として捉える事ができる性格のショウなのだと言える。
70歳という年齢に比して、素晴らしいショウを見せてくれている事に対しては色々なところで言われているし、いまさらぼくが言うまでもないだろう。マイクパフォーマンス、複雑で素早いステップ、激しいダンス、要所要所でのシャウト…70歳の老人のやる事とはとても思えない。正直「動いているところを見られたらそれでいい」と思っていた部分はあるのだが、そうした思いを完全に凌駕する、圧倒的なものを見せてもらった。そう思う。
「Seven Decades Of Funk」というのが、今回のツアーのサブタイトルだ。音楽生活のキャリアではなく、JB自身の年齢である「70年」という年月が冠されているのは、まさしく、この人の生きてきた人生そのものがファンクであった、そのことを意味しているのだ。
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