Disc Reviews
chocolate st☆rfish and the hot dog flavored water/limp bizkit
度重なるリリース延期の末、届けられたLimpのサードアルバム。全世界的にすごい売れ行きだそうだ。発売直後に近所のダイエーに買い物に行った際、レコードショップでこのアルバムがすでに売り切れていたのが非常に印象深かった。梅田やナンバなどの都会の輸入CDショップではなく、ごく身近なダイエーの店でキッズがCDを買っていってるのだ。
最近、このバンドを取り巻く状況は騒然としているようだ。メジャーになってファンを獲得していくのと反比例して、ミュージシャンやプレスからはとことん嫌われてきているらしい。特にVo.のフレッド・ダーストに対する反感をよく耳にする。先日の「MTVヴィデオ・ミュージック・アウォード」でも、Limp授賞の際にレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのメンバーが抗議的な行動を起こすという騒ぎがあったばかりだ。これだけ周りからバッシングされるということは、フレッド・ダーストは実際ひどいヤツなのだろう。だけど、例え彼がどれだけ最低のマザー・ファッカーだったとしても、ぼく個人としては特に何とも思わない。ロックミュージシャンはその人間性ではなく、作る音楽によって評価されるべきだというのもあるし、そもそもロックスターに高次の人格を求めてもしょうがないという気もする。とはいえ、こうしたバッシング状態は、バンド自体の性格や音楽性と不可分な関係にあるようにも感じられるし、バンド側も嫌われていることを逆手にとって「肥やし」にしようとしているみたいだ。
さて、これからこのアルバムを論評していくのだが、通り一遍の感想ではつまらないと思うので、少し細かく分析するために収録されている曲をいくつかのグループに分けてみたいと思う。「intro」と「outro」を除いた13曲を、曲の性格から次の4つのグループに分類するが、重複している曲もいくつかある。まずはA群。これはLimpお得意の、ハードコアなギターリフにフレッドの情けな声ラップがからみ、サビでは一気に咆吼!→カタルシス!タイプの曲。本作では前半に固められている。「hot dog」「my generation」「full nelson」。他に「rollin'(air raid vehicle)」と「livin' it up」もこのフィールドに入れておく。次にB群。こちらはラップではなく、主にフレッドが「歌ってる」、メロディー重視の曲群。「my way」「the one」。ラップが入ってるし、かなり感じは違うけど、「getcha groove on」も部分的にはここに入る。「it'll be ok」も歌ってる曲。次は、C群。基本的にはラップであり、サビで盛り上げる構成はA群と同じだが、全体的にダークで内省的な印象を持つ曲群。「take a look around」と「boiler」。歌っているが、曲の性格から言うと「it'll be ok」「my way」もここに入る。で、最後はD群。上記のどのフィールドからも少しはずれた曲。「hold on」と変なバックの「getcha groove on」。「rollin'(urban assault vehicle)」もここに入れる。あと「the one」のバックトラックは明らかに印象が違うので、部分的にここに入る。
まずA群について。これらの曲は、もう言わずもがなの「これこそLimp」というタイプの曲であり、まさにファンがバンドに求めているのはこの手の曲だ。その点、さすがにバンドはよく理解していて、きっちりツボを押さえた作りになっている。ゴリゴリのギターリフ、「f**k」の連発、サビの咆吼ヴォーカル…ライヴでは盛り上がり必至な曲ばかりだ。ただ、一聴した感じでは、前作、前々作を聴いたときのようなインパクトは感じられなかった。何回か聴き続けていくうちにそうした印象は薄くなったが、ややパターン化してきているように感じられるのも事実。耳がこの手の曲に慣れてきているのも原因かもしれない。ただ、こうした曲をこの先もずっとやり続けていくと必然的に飽きられることになるだろうし、バンドとしての成長もない。もちろん、そのことはメンバー自身がよく分かっているだろう。
それは、B群のような「歌う」タイプの曲が、前作、前々作に比べると明らかに増えていることを見ても明らかだろう。音楽的なヴァリエイションを増やそうとしているのがよく分かる。ただ、いかんせんフレッド・ダーストは歌がうまくないし声も細いから、やはり本格的に歌う曲を聴かされるのはつらい。メロディーはけっこういいものが多いだけに、フレッドの歌唱力不足が大きく足を引っ張っていると言わざるをえない。特に「getcha groove on」の前に収録されている短い曲でのヴォーカルはひどい。
ぼくは、本作ではC群タイプの曲がいちばん気に入った。無理に歌わなくても、ラップだけで曲に色んな表情を持たせることは可能だと思うし、ダークで、破壊衝動がひたすら内側へ向かっていくようなこれらの曲は、バンドサウンドの方向性として確固としたものになりつつあるように思う。外側へ放射される分かりやすい爆発感ではなく、地中深くで人知れず起こっている核爆発のような…。特に「take a look around」は、映画「M:I-2」のテーマソングであり、例のフレイズが使われていることとは無関係に、「名曲」(あえてこういう言い方をするが)だと思う。サビでは思わず体が動いてしまう。このカタルシスはすごい。
最後にD群について。「hold on」はLimpの曲としては明らかに異質で、ちょっと確認できないけど、ヴォーカルがどうもフレッドの声とは違うような気もする。メロディー、曲の雰囲気、イメージ喚起力、いずれもいい。佳曲だと言える。ただ、あまりに異質すぎて、これではLimpの曲とは言えないくらいの印象さえ持つ。DJリーサルのプレイが前面に出た「getcha groove on」「rollin'(urban assault vehicle)」の2曲について。ぼくは思うのだが、Limpのようなきっちりした「バンド」に、DJがメンバーとして加わってやっていくスタイルは、かなりむつかしい。どう考えても皿を回して出す音より、ギターやベース、ドラムスの出す音の方がでかくて迫力があって負けてしまうし、けっきょくサビの時にバックでキュコキュコ言ってるだけ、という状況になってしまう。だけど、DJの入ったスタイルでこれだけメジャーになったバンドはLimpが初めてなのだし(古くは「アーバン・ダンス・スクウォッド」なんていうバンドがあった)、DJリーサルにはもっと活躍してほしいし、もっと大きな役割を負うようになってほしい。ただ、上記の2曲はアルバムの中では少し「浮いてる」感じだし、「バンドサウンド」と「DJプレイ」がはっきり分かれてしまったら、一緒にやっている意味があまりないような気もするのだ。今後に期待したい。「the one」のバックトラックはすごく気に入った。こういう、少し力の抜けた曲をもっとやってもいいのでは、という気もするが。
買ってから何度も聴いているのだが、いまだにこのアルバムのかっちりした印象が固まっていないような感じがする。確かにヴァラエティに富んでいるし、盛り上がれる曲も多い。だけど、色んな試みもけっきょく表面的なもので、中身は何もないのでは?という気さえする。本作は桁違いに売れているらしいが、それだけ売れるということは、「何も考えてないヤツが踊らされて買ってる」ということも意味するわけで。しかし一方で、「いや、バンドもある程度成長を遂げているみたいだし、なかなかいいアルバムだ」という気持ちもある。正直よく分からないのだ。2001年初頭には来日するらしいので、もしチケットが取れれば足を運んでみようかと思っている。実際にステージを見れば何か分かるのかもしれない。
個別リンク:http://www.mine-d.com/article/archives/2004/06/chocolate_strfi.html|↑