Pick-Up Tunes

Fight Like A Brave(UMPP)

 ちょっと自慢させてほしいのだが、ぼくはこの曲のライムを80%くらいは口ずさめる。年月が経った分かなり忘れてしまったが、今でもまだけっこういけると思う。やってみたことのある人は分かると思うが、アンソニー独特の、早口のライムは追っかけるのがすごくむつかしい。なぜできるのかというと、もちろん必死で練習したのだ。「そんなことをしてなんになるのだ」と自分でも思うのだが、ファンになったばかりの頃は、とにかく歌を覚えたいという欲求が強かった。特にこの曲を覚えたかった。当時仕事をしていても何をしていても、頭の中で無意識にこの曲のライムを練習していたのを覚えている。

 個人的にすごく気に入ってるアルバム「The Uplift Mofo Paty Plan」。バンドの真の意味でのスタートととも言えるこの作品の初っぱなを飾る曲は、初期RHCPの代名詞とも言ってもいいほど彼らの持ち味、特徴を端的に語っている曲だと言える。英会話学校に通っていた頃、RHCPの名前を出すと反射的にこの曲を挙げるネイティヴのティーチャーも多かった。いわゆる「体育会系」コーラス、ハードコアテイスト、ラップ、「勇者のように闘え!」という威勢のいいアジテイション…。たしかに初期RHCPの持つ特徴の一面を、そのまま曲にしたようなチューンである。

 もちろん、この曲のヴィデオクリップによく表れているような、彼らの明るくて、おバカな面は大好きだ。だけどもし、このバンドがそれだけで終わっていたら、ぼくはけっしてファンにはならなかっただろう。たとえばこの曲ひとつ取り上げてみても、歌詞をじっくり読んでみれば、上っ面の明るさだけでは終わらないRHCPの「深さ」のようなものを感じ取ることができると思う。

You say you're running and you're running
and you're running afraid
You say you ran across the planet
but you couldn't get away
The fire in your brain
was driving you insane
You were looking for a day
In a life that never came

オマエは言う 逃げて逃げて逃げ回って来たんだと
恐怖に駆られ 惑星間を駆けめぐるほど逃げ回ったけど
けっきょく 逃れられなかったんだと

オマエの頭の中で燃えさかる 炎がオマエを狂気に走らせていたのさ
オマエは「その日」が来るのを待っていた
だけど そんな日はオマエの人生に一度だって訪れたことはなかった

 たいして英語力があったわけではないが、このパートの主旨は考えなくてもすぐ分かった。この訳詞はニュアンスが違うかもしれないが、そんなことはどうでもいい。ぼくがこの曲から受け取ったメッセージはこういったものだったのだ。「これはまさにおれ自身のことを言ってるのだ」、そう思った。ちょっと信じられない気持ちだった。洋楽の歌詞が自分の「魂」の領域にまで食い込んでくるなんて思ってもみなかったのだ。特に「その日が来るのを待っていた、だけどそんな日は一度だって来たことがない」という所などは鋭く心につきささった。大事なことを先送りにして、「やればできる」などと思いながら実際は何にもせずに生きていく毎日。「来るだろう」というかすかな期待をこめた「その日」を、当てもなく待ち続けている…その当時のぼくの心情をずばり言い当てられた気がしたし、「耳が痛い」からこそ、自分にとって切実なメッセージだという気がした。

 この曲は、ぼくにあの当時の自分自身を思い出させる。就職して2年目、親元を離れて一人暮らしを始めた下宿でこの曲を聴いていた、あの時の自分がよみがえる。どうしようもなく将来に不安を抱えながらも、「おれにはロックがあるから大丈夫だ」などと強がっていた自分…。この曲が惹起させるのはこういった側面ばかりだ。こんなに明るくて威勢のいい曲なのに…。ほんとに変なファンだとは思う。だが、そういう想いこそが、このバンドに固有のアンヴィバレントな魅力を物語っているようにも思うのだ。

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