Disc Reviews

SlipKnot/SlipKnot

 ゾンビ、キチガイピエロ、ガスマスク、天狗、ボンデイジ、死体、幽霊…それにしてもメンバーのいでたちはすごい。雑誌等で見てご存知の方も多いだろう。悪趣味というかマヌケというかハリウッド映画の狂気というか、どうせやるならここまでやれよ、というお手本のような格好だ。すばらしい。

 このアルバムで初めて音を聴いたのだが、ぼく的にはこういういでたちなら…たとえば、メンバー全員が奇声を発しながら太鼓を狂気乱打する…そんなパフォーマンスだったとしても別段驚かない。ぼくも相当色んなものを見たり聴いたりしてきたつもりだ。心づもりはできている。だけど、ここで展開されている音はいたって「まとも」だと言える。正直これほどしっかりした音楽性を有しているとは思っていなかった。見た目とのギャップがすごいのだが、メロディーをしっかり歌っている曲もある。

 もちろん、「しっかりしている」といっても、それはある程度限定されたフィールドの中での微細な差異の話だともいえる。思うのだが、このところ大量発生しているこの手の「ロス・ロビンソンもの」は、おしなべて没個性化が進んでいるように感じられてならない。もちろん、個々のバンドによって多少傾向の違いはあるが(このバンドでいうとノイズ、スラッシュ的要素などが多少勝っている、あとアジア民族音楽テイストも面白い)、ハードコアなゴリゴリリフ、ヒップホップの消化、グルーヴ感…どのバンドの音も明らかに同じ質感を有している。まったくこの手の音を聴かない人に、このバンドと…例えばKORNとの違いを説明しろと言われたらかなり苦しい、こういう音をよく聴く人にとって両者の音楽性はまったく違うにも関わらず。

 しかし。注意しなければいけないのは、もはやこうしたバンドがやろうとしていることは、後世に残るようなすばらしい音楽を作ることや、じっくりと聴き込ませるような音楽を作ることではない、ということだ。クソみたいな現実生活の中で人間の内部に蓄積していくネガティヴなエネルギー。それらを、破壊的な音世界を通じて一気に放出する、ただそれだけのために機能するロックミュージックがあってもいいと思うし、昨今のアメリカン・ヘヴィロックにおいては特にその傾向が強まっているようにも思える。ユースの爆発的なフラストレーションを排出するための、「装置」としての音。もはやそれは、音自体に意味があるのではない。当然モッシュやダイヴが乱発しているだろうライヴ会場で、「鳴っている必要がある」だけの音。そして、彼らの主張したいことはただ「Fuck it all. Fuck this world」、それだけだ。だけど、ただそれだけのことを言うために、ものすごいエネルギーを費やしているし、それこそ全身全霊をこめて主張しているように思える。だからこそ、このバンドはリアルであると思うし、ある種のパワーを有しているのだ。

 自分自身の話をすれば、子供を保育所に送りだして、クソ忙しい中なんとか5分くらい時間を作っては公園で一服…死ぬほどうっとうしいけど、これから仕事に行かなければいけない…そんな時、CDウォークマンでこのアルバムをでかい音で聴いたりする。金とコネのある人なら覚醒剤のひとつでも買って一発キメて…ということになるのかもしれないが、もちろんそういうわけにはいかない。そういう場面で聴きたくなる音は、まさにこういう音なのだ。プレスがなんといってようが関係ない。ぼくにはこういう音が必要な場面が、確実にある。それだけのことだ。

 ファンにしてみれば、この評を読んで「バカにしてんのか?」と言いたくなるかもしれない。いや、ぼくはこのアルバムに収められている音は、なかなか聴くに値するものだと思う。ナイン・インチ・ネイルズあたりは聴くのに、このバンドは「色物でしょ…?」と敬遠している人がいたら、一度騙されたと思って聴いてみてもいいかもしれない。冗談みたいな見た目に惑わされることなく。…いやむしろ、今の時代のアメリカン・ヘヴィロックを正しく理解するためには、こうした「色物」をこそ聴く必要があるのかもしれない。そんな気にさせられた作品だった。

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