Show Reports
Red Hot Chili Peppers(2007年6月8日・京セラドーム)

2002年のBTWツアー以来、間にロック・オデッセイ、フジロックなどを挟んだものの、単独公演としては実に5年ぶりになるRHCPライヴ。今回はついにドームでやるようになった。東京二日、大阪一日である。何度も書いているようにぼくは90年の初来日ライヴを見ていて、これまた何回も書いていていい加減うざいと思われている事請け合いだがその時の会場がミューズホールという写真のような小さなホールであったので、まさに隔日の感がある。まずこのバンドが多々の困難を乗り越えてここまで生きながらえたばかりか、バンドとして大きく成長してきた事、加えてぼくも色々あったにも関わらず、これまでなんとかファンをやめずに続けてこれた事を、単純に素晴らしいと思う。自分で言うのもなんだけれど。
単独での来日公演はとりあえず最低でも一回は見ている事になるのだが、2000年のCalifornicationツアーまでは一人でライヴに出かけて、一人で帰る事がほとんどだった。しかし、このサイトを始めたおかげで2002年のBy The Wayツアー、今回のStadium Arcadiumツアーとも、知り合いになることができた実にたくさんの人達と、ライヴ中も一緒に見たり、ライヴ後も打ち上げ等でお会いできるなど、とても充実したライヴ体験をさせてもらえる事になった。改めて、日頃お世話になっている方々にこの場で感謝したい。ありがとう。
当初3月に予定されていた公演だが、アンソニーが気管支肺炎に罹患してしまい、公演直前で急遽延期になってしまった。個人的な事になるが、父親が2006年の6月に癌の告知を受け、2007年年明けからホスピスに入院していて、3月の公演日あたりはいつ亡くなってもおかしくないというような状況だった。一時は参加する事をあきらめ、確保していたチケットも友人に譲ってしまったが、やはりどうしても見たいという気持ちが収まらず、急遽オークションでチケットを購入していた中での延期発表だった。急な延期発表で大変な思いをした人がいっぱいいるのだが、mine-Dとしてはおかげで気持ちにゆとりをもってライヴを見ることができたし、ライヴ後のオフ会にも参加できたので、ありがたい事だった。けっきょく父親は本来の来日日程真っ最中の3月21日に亡くなった。
さて、インターネットや各種デジタル・イクイップメントは日々進化しているようで、このところユーザ同士が協力してコンテンツを作りあげるような、CGM (Consumer Generated Media)と呼ばれるコミュニケーションの傾向が急速に強まっているように思う。4月に行われたオーストラリア公演の音源などは、公演日の2日後くらいには自分のiPodで聴くことができていたという状態で、倫理的な問題はともかく、ロック・ミュージックのファンにとって、ますますエキサイティングな時代になってきているのだという感を強くする。2ちゃんねるのRHCPスレにセットリストを丹念に投げてくれる人もいたし、海外メディアによって撮られたメンバーのプライベート写真も見られた。そういう経緯もあって、だいたいどんな曲をやるかは(サプライズも含めて)ある程度想像がつくし、悪評のアンソニーの髭も含めてメンバーの風貌も、ほぼリアルタイムで把握しているという状態だった。
しかし、実際始まってみるとやっぱり生のライヴは全然違う、やっぱりいいもんだと、改めて思わされたショウだった。開演前の薄暗い照明の感じとか、低いトーンでざわつく客席とか、小さい音量でかかっている色んなアーティストの音楽とか、客電消えた瞬間の高揚感とか、最初に一発腹の底にずしんと来るようなベース音の感じとか、会場の独特の匂いとか、照明とか…。5年間見ていなかったRHCPライヴをこうして目の前で見られた事を、心からうれしいと思った。
ドーム・クラスのバンドにふさわしく、セットも今まででいちばん金がかかっていただろう。ステージ後ろには巨大スクリーンが配置され、その前に四つ、小さめのスクリーンが並ぶ。ハンドカメラで4人の姿を撮影し、リアルタイムでスクリーンに映していく。そのままライヴDVDとしてリリースできるくらいのクォリティであり、ライティングあたりも含めて、この辺は本当にきちんと手間とお金とセンスをつぎ込んだという感じで好印象だった。
ただ、そうしたバンド周辺のアップグレード感とは裏腹に、メンバーの意識はあまりにも普通。ジョンとフリーが時々、申し訳程度に左右の袖に歩いてくる程度で、基本的には4人で小さく集まって、頭突き合わせて演奏するスタイルは昔のまんまだった。「スタジアムならではの演出」とかそういったものとは一切無縁で、本当に演奏スタイルだけに関して言えば、あきれてしまうくらい昔から変わっていない。
ジョンに関しては絶好調で、公私ともに充実しているんだろうなぁと感じさせる素晴らしいプレイだった。チャドはもともと素晴らしいのがさらに素晴らしく、余裕の存在感がさらに増していた印象を受けた。今回RHCPを初めて見る人も多かっただろうが、ライヴを見て初めてチャドの素晴らしさに気づいた人は多かったのではないだろうか。アンソニーはたまに調子の悪い時も見られたが、よくがんばっていたのではないかと思う(上から目線で申し訳ないが)。個人的にちょっと気になったのはフリーの動きが今ひとつのように感じられたことだ。2002年の公演では「ベース抱えたまま前方回転」をやっていたのをよく覚えているので、それに比べると大人しいと言わざるを得ない。名物のMCもいまひとつ元気がなかったように見受けられた。たまたま日本での調子が悪かったのかもしれないが。
総じて、「パーティーだ!クレイジーにぶっとぶぜ!」みたいな空気のライヴではなかった事は確かだ。けれどスクリーンに映し出される四人の顔は真剣そのもので、良い演奏をすることによって何かを伝えようとしている気持ちがひしひしと伝わってくるようだった。なんというか1曲1曲の重みが、いままでのライヴと比べても断然違うように感じられた。今のライヴはミューズホールの時のそれとは違ってあんまり動かないけれども、けっこういい歳をしたおっさんのバンドなので、昔みたいに有酸素運動量の激しいステージを毎回やっていたら体がもたないだろう(余談になるが、昔母乳あたりのステージを見て「こんな気違いみたいに動いてて、歳とったらどうするんだろう」と思ったのを覚えている)。しかし、そんなオールドファンのこだわりみたいなものがアホらしいと思えるほど、普通に演奏そのものを堪能できた。圧倒的にいいライヴだと思った。
ドーム公演が決まった時は、「椅子席だからなぁ」「ドームって音悪いんだろうなぁ」「にわかファンばかりだとイヤだなぁ」などとネガティヴな事ばかり考えていたのだが、見終えた今、そんな自分を「小さいなぁお前」と情けなく思う。バンド結成時の初期衝動を損なわずに、そのままドーム・クラスにまで成長できたRed Hot Chili Peppersというバンドを、改めて好きになったライヴだった。
個別リンク:http://www.mine-d.com/article/archives/2007/06/red_hot_chili_p_2.html|↑