Pick-Up Tunes

B-Sidesまとめレビュー

2006年3月、米iTunesでRHCPのアルバム(ワーナー以降)がダウンロード販売されるのに伴い、何曲かの未発表曲がボーナストラックとして初めて公開された。曲単位での購入ができなかったため、ファンの間では「コアなファンの足元を見るような行為」だとして批判が高まった。それゆえか、購入した楽曲をネットで公開する人もあらわれ、物議を醸した。いずれにせよ日本からは特別で煩雑な方法をとる以外購入する術はなく、ワーナーの態度は不満の残るものであったと言わざるを得ない。2006年4月現在、日本のiTunesではRHCP(およびワーナーのバンド/アーティストそのもの)の楽曲が販売されていない。

楽曲そのものの出来は上記のようなゴタゴタとは関係なく素晴らしいものであるので、ここに「B-Sides」としてまとめてレビューしておきたい。今回リリースされた楽曲は以下の通り。

  • BSSMから
    • Little Miss Lover
    • Castles Made From Sand (Studio Version)
  • OHMから
    • Let's Make Evil
    • Stretch You Out
    • Bob
  • CALから
    • Fat Dance
    • Over Funk
    • Quixoticelixer
  • BTWから
    • Runaway
    • Bicycle Song

このうち、Castles Made From Sandはご存じジミ・ヘンドリックスのカヴァーでライヴではよくプレイされていたもの、Let's Make EvilとStretch You Outはシングル「My Friends」のカップリングですでにリリース済み、Fat Danceは「Phat Dance」としてヴォーカルテイクの違う音源が以前からブートレグその他で出回っており、実質的な初披露はLittle Miss Lover、Bob、Over Funk、Quixoticelixer、Runaway、Bicycle Songの6曲ということになる。

Little Miss Lover

BSSMセッションは非常に集中力の高いもので、楽曲はどれも質がよいが、中でもとりわけすばらしいと言える曲。これもCastle...と同じジミ・ヘンドリクスのカヴァー。ネトネトと粘り着くファンキーテイストたっぷりに仕上げたという趣か。BSSMはアルバム自体の収録楽曲数も多いが、すでに発表されたアウトテイクの中にもSikamikanicoやFela's Cockなど質の高いものがある。そこへさらにこのレベルの曲なので、ファンとしては「まだこんなの持ってたのかよ」と半ばあきれながら驚嘆してしまう。

(ジミのカヴァーというのは指摘をいただくまで知らなかった。勉強になります)

Bob

いままでリリースされた(OHMの)アルバム、アウトテイクをすべて聴いた者としては、ある程度パターンで把握している範囲内の音で、おなじみデイヴ節が展開される。先述したLet's Make EvilやStretch You Outを初めて聴いたときのような意外感はなく、今回のリリースの中では残念ながら不発に終わってしまった曲であると言わざるを得ない。

Over Funk

これはいい。アルバムの中で言えばPurple Stainくらいのミドルテンポのファンクなのだが、ジョンの音作りはハードで、アルバムの印象とはかなり異なる。サビのリフなど最高にクール。あえて抑えたギターソロもすばらしい。

Quixoticelixer

タイトルはおそらく一生発音できないと思うが、曲の出来は目を見張るほどのすばらしさ。個人的には、RHCPとしてリリースされたすべての曲の中でも一、二を争うほどのものだと思う。メロディーのユニークさ、ジョンのコーラス・ワーク、CAL以降に特徴的なアンソニーの不思議詩空間が相まって、独特の情感、アトモスフィアを構築している。テンポが変わる構成も面白く、バンドとしてのチャレンジが見事に成功した例の一つであると言える。もし収録されていたら、Californicationというアルバム全体のトーンを変えてしまっていただろう。

Runaway

テンポ的にはTearに近いバラードだが、また違った味わいで素晴らしい。低音で鳴らされるピアノと、ジョンのなんとも切なくなるようなギターフレイズが特徴的で、まさに「ジョンの」アルバムBTWらしい曲といえる。BTWセッションも収録曲が多く、すでにカップリングで披露された曲から全体像を徐々に把握してきているつもりではあったのだが、まだこのクオリティの楽曲が残されていたというのは、いったいどれだけのテンションなんだと驚嘆してしまう。

Bicycle Song

これもいい。RHCPでもちょっと他に似た曲の見つからない良品。BTWで特徴的な「歌もの」メロディの逸品と言っていい。歌詞に(おそらく)「the beauty of your birth」とあり、レビューでも触れた「美」が顔を出している印象。


5月に発売が予定されているStadium Arcadiumも、セッション全体では38曲を収録したというので、ファンとしてはまたアルバムから漏れた曲を集めて回る苦労が生じるのかと思うと気が重いが、このように質の高い楽曲ばかりなら、それもまた「うれしい苦労」と呼べるのかもしれない。もちろん、今回のワーナーのような意地の悪い売り方は容認できないが。

個別リンク:http://www.mine-d.com/article/archives/2006/04/bsides_1.html

Pick-Up Tunes

Soul To Squeeze(BSSM session)

 「Blood Sugar Sex Magik」収録時に録音されたが、けっきょくアルバムには入らなかった曲「Soul To Squeeze」。「Gong Li」の1曲レヴューでも触れたが、メロディの美しい珠玉のバラードであり、この曲の熱烈なファンである、という方も多いだろう。

 シングル(「Give It Away」他)のカップリングや「Live Rare Remix Box」というコンピレイションに収録されている等、入手の手段は限られているので、曲自体探しにくいというのもあるが、この曲、どうやら正式な歌詞が公表されていないようなのだ。ワーナー・ジャパンからリリースされたものには歌詞と対訳がついているらしいのだが、本国アメリカでリリースされたものに関しては、アンソニーの手書き/活字に関わらず歌詞が掲載された事はないようだ。つまり、日本盤の歌詞は日本人スタッフによる聞き取りによるものである可能性が高い。また、Googleで「Soul To Squeeze lyric」などと打ち込んでヒットする海外の歌詞サイトにも、いくつかのヴァージョンが散見される。

 以前、掲示板でリクエストしてもらった事もあって、mine-Dなりに「これかな」という歌詞、それと対訳を載せてみたいと思い、こうして1曲レヴューという形で発表させてもらうことにした。歌詞(原詞)については上で触れた海外歌詞サイトのいくつかの聞き取り、並びに日本盤歌詞カードに記載された聞き取り(アルさん感謝)、などを参考に、自分でも実際に何度も聴きながら「mine-D version」としてまとめてみた。その原詞を元に、mine-D個人で訳してみた日本語詩を併記しておく。

 この曲の詩世界は、BSSMに収録された他の曲とはやや毛色が違い、後の「Otherside」(「Californication」)に見られるような、非常に内向的で、己の心の内面に潜む狂気と対峙するような内容となっている。そうした、痛みに溢れた詩が、とても美しいバラードのメロディに乗って歌われるこの曲は、やはり「名曲」と呼ぶ以外ないと思わせられる。このコラムが、あなたがこの曲を理解する一助になれば幸いだと思っている。

Soul To Squeeze(mine-D version)

I got a bad disease
Up from my brain is where I bleed
Insanity it seems
It's got me by my soul to squeeze

Where are the love from me
With all the dying trees I scream
The angels in my dreams
have turned to demons of greed, that's me

(Chorus)
Where I go I just don't know
I got to go to gotta take it slow
When I find my peace of mind
I'm gonna give you some of my good time

Today love smiled on me
It took away my pain, say please
Oh let your ride be free
You gotta let it be oh yeah

(Chorus)

Oh so polite indeed
Well I've got everything I need
Oh make may days a breeze
And take away my self-destruction

It's bitter baby and it's very sweet
I'm on a roller coaster but I'm on my feet
Take me to the river let me on your shore
I'll be comin' back maybe
I'll be comin' back for more

Do do do do dingle zing a dong a bone,
Ba-di ba-da ba-zumba crunga cong gone bad
I could not forget but I went out and never said my pleasures
I'm much better but I won't regret it never

(Chorus)

Where I go I just don't know
I might end up somewhere in Mexico
When I find my peace of mind
I'm gonna keep you for the end of time


ソウル・トゥ・スクィーズ(mine-D訳)

悪い病気に罹ってるんだ
この頭の中にある脳みそ
そこから僕は血を流す
それはどうやら 狂気
僕を捕らえ 僕の魂を締め付けるんだ

僕から出てくる愛はどこへ行った?
僕がそのために泣いた、
すべての「死にゆく木々」を引き連れて
僕の夢の中に現れた天使達は
貪欲な悪魔に姿を変えてしまった
それが僕だ

(コーラス)
行くんだ どこか知らないところへ
とにかく僕は ゆっくりとやっていく
心の平安を見つけた時は
僕のいい時間を 君に少し贈ってあげよう


今日 愛が僕に微笑みかけてくれた
それは僕の痛みを取り去ってくれた
そうだよね?
ああ 君の人生を自由に解き放てよ
あるがままに受け入れるんだ、そうだよ

(コーラス)

ああ 本当に優雅だね
僕は 必要なものはすべて手に入れた
さあ 僕の人生に波風を立ててくれよ
そして僕の この自己破壊衝動を
どこかへやってしまってくれよ

ねえ それはほろ苦くて、とても甘いんだ
僕はジェットコースターに乗っている
でも、自分の足で立っている
あの川に連れていって 君の岸辺にいさせて
そのうちやり直すさ、たぶん
そのうちやり直すさ、今度はもっと

ドゥ・ドゥ・ドゥ・ディングル・ジング…
バ・ディ・バ・ダ・バ・ズンバ…
忘れる事なんてできない でも外の世界へ出て
けっして自分の楽しみについて語ったりしなかった
ずいぶんマシになってきている
だけどけっして後悔したりはしない けっして

(コーラス)

行くんだ どこか知らないところへ
メキシコのどこかの町でひっそりと死ぬのもいい
心の平安を見つけた時は
それを君にとっておいてあげよう
最期の時のために


個別リンク:http://www.mine-d.com/article/archives/2004/06/soul_to_squeeze.html

Pick-Up Tunes

Gong Li(CAL session)

   RHCPには「アルバムに入っていない名曲」がかなりある。この傾向は特に「BSSM」以降強くなったようだが、セッションで録音はしたが、あえてアルバムには収録しなかった曲…代表的なものとしては「Soul to Squeeze」(BSSM)などがある。この曲などは、アルバムに収録されていれば間違いなくキーとなっていただろう…それくらいいい曲なのだが、なぜ収録しなかったのかはバンドやプロデューサー側にも色々考えがあるだろうから、それに対してどうこう言うつもりはない。ただ、ファンとしてはアルバムだけでなく、付随してリリースされるシングルまでもきっちりフォローしておかなければならないので、なかなか大変ではある。うっかりしていると名曲を聴き逃してしまうことになる。ぼくがこの「Gong Li」を聴き逃していたように。

 アルバム「Californication」は買ったが、アルバムからカットされていくシングルをひとつも購入しなかったので、当初この曲や「How Strong」「Instrumental...」などの曲は…その存在を知ってはいても、実際に聴いたことはなかった。その後1年以上経ってから聴くことになったのだが、自分がシングルを買い求めなかった事を、激しく後悔した。この曲は、上で紹介した「Soul to Squeeze」に匹敵するくらいの名曲じゃないか、まったく…。

 リズムマシーンとギター、ベースによる印象深いパートで始まるこの曲。変拍子というのか、ある意味実験的で、実に奇妙なフレイズが繰り返される。その後、いきなりアンソニーのヴォーカルが入ってきてメインのメロディが始まるのだが、これが実に「泣かせる」節回しなのだ。これほどストレイトにナイーヴィティを表現した曲は、他には見あたらない気がする。逆にここまでナイーヴなメロディだと、ともすれば情緒に流れてしまう危険性があると思うのだが、先に挙げた変拍子パートの存在が、曲全体に絶妙なバランスを与えているように感じる。

 アンソニーの歌詞世界も、相当高いレヴェルにあると言える。使われている単語は簡単なものばかりだし、文章自体もシンプルそのものだが、その意味は簡単には理解できない。それはまるで、聴き手に意味の解釈をゆだねるているような、実に広がりのある歌世界だと言える。

 まあ好みもあるだろうが、この曲は本当に「直球ど真ん中!」といった感じで、初めて聴いた瞬間に好きになった。これが「Californication」に収録されていたら、アルバム自体の性格がガラッと変わっていただろうと思う。「CAL」に入っているバラードより、断然こっちの方が好きだ。いずれにせよ、いつもとは言わない、たまにでいいからこういうホロっとくるようなメロウな曲を作ってほしい、真剣にそう願っている。

個別リンク:http://www.mine-d.com/article/archives/2004/06/gong_lical_sess.html

Pick-Up Tunes

Fight Like A Brave(UMPP)

 ちょっと自慢させてほしいのだが、ぼくはこの曲のライムを80%くらいは口ずさめる。年月が経った分かなり忘れてしまったが、今でもまだけっこういけると思う。やってみたことのある人は分かると思うが、アンソニー独特の、早口のライムは追っかけるのがすごくむつかしい。なぜできるのかというと、もちろん必死で練習したのだ。「そんなことをしてなんになるのだ」と自分でも思うのだが、ファンになったばかりの頃は、とにかく歌を覚えたいという欲求が強かった。特にこの曲を覚えたかった。当時仕事をしていても何をしていても、頭の中で無意識にこの曲のライムを練習していたのを覚えている。

 個人的にすごく気に入ってるアルバム「The Uplift Mofo Paty Plan」。バンドの真の意味でのスタートととも言えるこの作品の初っぱなを飾る曲は、初期RHCPの代名詞とも言ってもいいほど彼らの持ち味、特徴を端的に語っている曲だと言える。英会話学校に通っていた頃、RHCPの名前を出すと反射的にこの曲を挙げるネイティヴのティーチャーも多かった。いわゆる「体育会系」コーラス、ハードコアテイスト、ラップ、「勇者のように闘え!」という威勢のいいアジテイション…。たしかに初期RHCPの持つ特徴の一面を、そのまま曲にしたようなチューンである。

 もちろん、この曲のヴィデオクリップによく表れているような、彼らの明るくて、おバカな面は大好きだ。だけどもし、このバンドがそれだけで終わっていたら、ぼくはけっしてファンにはならなかっただろう。たとえばこの曲ひとつ取り上げてみても、歌詞をじっくり読んでみれば、上っ面の明るさだけでは終わらないRHCPの「深さ」のようなものを感じ取ることができると思う。

You say you're running and you're running
and you're running afraid
You say you ran across the planet
but you couldn't get away
The fire in your brain
was driving you insane
You were looking for a day
In a life that never came

オマエは言う 逃げて逃げて逃げ回って来たんだと
恐怖に駆られ 惑星間を駆けめぐるほど逃げ回ったけど
けっきょく 逃れられなかったんだと

オマエの頭の中で燃えさかる 炎がオマエを狂気に走らせていたのさ
オマエは「その日」が来るのを待っていた
だけど そんな日はオマエの人生に一度だって訪れたことはなかった

 たいして英語力があったわけではないが、このパートの主旨は考えなくてもすぐ分かった。この訳詞はニュアンスが違うかもしれないが、そんなことはどうでもいい。ぼくがこの曲から受け取ったメッセージはこういったものだったのだ。「これはまさにおれ自身のことを言ってるのだ」、そう思った。ちょっと信じられない気持ちだった。洋楽の歌詞が自分の「魂」の領域にまで食い込んでくるなんて思ってもみなかったのだ。特に「その日が来るのを待っていた、だけどそんな日は一度だって来たことがない」という所などは鋭く心につきささった。大事なことを先送りにして、「やればできる」などと思いながら実際は何にもせずに生きていく毎日。「来るだろう」というかすかな期待をこめた「その日」を、当てもなく待ち続けている…その当時のぼくの心情をずばり言い当てられた気がしたし、「耳が痛い」からこそ、自分にとって切実なメッセージだという気がした。

 この曲は、ぼくにあの当時の自分自身を思い出させる。就職して2年目、親元を離れて一人暮らしを始めた下宿でこの曲を聴いていた、あの時の自分がよみがえる。どうしようもなく将来に不安を抱えながらも、「おれにはロックがあるから大丈夫だ」などと強がっていた自分…。この曲が惹起させるのはこういった側面ばかりだ。こんなに明るくて威勢のいい曲なのに…。ほんとに変なファンだとは思う。だが、そういう想いこそが、このバンドに固有のアンヴィバレントな魅力を物語っているようにも思うのだ。

個別リンク:http://www.mine-d.com/article/archives/2004/06/fight_like_a_br.html