Mother's Milk('89)
Good Time Boys/Higher Ground/Subway To Venus/Magic Johnson/Nobody Weird Like Me/Knock Me Down/Taste The Pain/Stone Cold Bush/Fire/Pretty Little Ditty/Punk Rock Classic/Sexy Mexican Maid/Johnny,Kick a Hole In The Skyヒレル・スロヴァクをドラッグで失い、ジャック・アイアンズもバンドを離れた後、新ギタリストにジョン・フルシャンテ、ドラマーにチャド・スミスを迎えて制作された通算4枚目のフルアルバム。プロデューサーは前作に続いてマイケル・バインホーン。このアルバムでバンドを知ったというファンも多いだろう。RHCPの名を日本でも知らしめることになった1枚。裏ジャケットには亡くなったヒレルの描いた絵が印刷されており、「このアルバムをヒレル・スロヴァクの思い出に捧ぐ」と記されている。
前作に比べると、ハードロック、ヘヴィメタル色が濃くなっているのが分かる。もちろん、根底を貫くファンクビートは健在だが、全体的なサウンドはよりハードに、メタリックに変化してきている。ありがちな表現で心苦しいのだが、このバンドのハチャメチャさ、アナーキーさがいちばんよく現れているアルバムであり、有り余るエネルギーをそのまま放出したかのような勢いにあふれる1枚である。とにかくパワーがある。
「Intro」の話の続きだが、ヒレル・スロヴァクの死後も「宝島」誌はRHCPをフォローしてくれていて、ジョンやチャドの加入、新アルバム制作のニュースも宝島を通じて知った。当時はロック誌でもこのバンドを取り上げていた雑誌は希有だったので(というかぼくの知る限りではなかったが、「ミュージック・マガジン」誌ではかなり以前から取り上げられていた、という話も聞いている)、当時の「宝島」誌の姿勢は貴重だったといえる。このアルバムに先行して映画「Say Anything」のサントラに「Taste The Pain」が使われると知り、RHCP以外はさほど聴くべきところのない(なにか聴くに値する曲も入っていたような気がするが、今では思い出せない)サントラ盤を買い求めたり、たいして面白くもない映画をレンタルで借りてきて見たりした。このアルバムがリリースされた89年はぼくが就職した年であり、わざわざ京都まで、仲良くなったばかりの職場の先輩と輸入盤を探しに出かけていったのを覚えている。
「Taste The Pain」を聴いていたので、このアルバム全体がおとなしくなってしまっているのではないかと多少心配していたのだが、その心配は「Good Time Boys」を一聴してすぐに払拭された。
ただ、個人的にはあまりこのアルバムは気に入っていない。あくまで個人的な好みの問題なのだが、ハードロック、ヘヴィメタル寄りのアプローチがあまり好きではないのだ。気に入ってる前作、「The Uplift Mofo Party Plan」でのハードコアとファンクの絶妙のバランス感覚がここにはなく、やや「ベタ」な分かりやすい「メタルファンク」(当時彼らの音楽性がこう表現されていたこともある)になってしまっている、と感じるからだ。特に「Nobody Weired Like Me」や「Stone Cold Bush」などの曲群でそれを感じる。それと、「Punk Rock Classic」なんかも含めてだが、メロディー作りがややイージーに過ぎるという印象も受ける。もっとも、前作をあまりにも聴き込みすぎたため、一面的なものの見方に陥ってしまっているのだろうし、もし初めて聴いたのが、このアルバムだったならば印象も違ったのかもしれない。しかし、ぼくがこのアルバムに対して、ちょっと雑な印象を抱いてしまうのは事実だ。その一方、「Magic Johnson」のように、まさにRHCPでなければできない曲もある。また、「Knock Me Down」では、後の「Californication」に見られるような「泣き」のメロディーがかいま見られ、面白い。
フリーのベースプレイをはじめ、この盤でのバンドの演奏はすばらしく、彼らのとんがった音楽性が、確かな演奏力に裏打ちされているのだということを再確認させる結果となった。「ミュージック・マガジン」誌のアルバム評では、(当時まだ彼らの音楽性が理解されていなかったこともあり)総じて点数は低かったのだが、フリーのプレイだけは高く評価する意見が見られたように覚えている。
ひとつ指摘しておきたいのは、「Fire」はこのアルバムには収録するべきではなかったのではないか。この曲は先行したミニアルバム「The Abbey Road E.P.」でのメインの曲なのだし、サウンド的にも他の曲との差が大きく、ひとり浮き上がっている印象を持ってしまうからだ。
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