One Hot Minute('95)

Warped/Aeroplane/Deep Kick/My Friends/Coffee Shop/Pea/One Big Mob/Walkabout/Tearjerker/One Hot Minute/Falling Into Grace/Shallow Be Thy Game/Transcending

 「Blood Sugar Sex Magik」ツアーで日本を訪れている最中、京都公演(というより「長岡天神」公演)の開演直前にバンド脱退を決めてしまったジョン・フルシャンテ。そのジョンの穴を埋めるべく、暫定的なギタリストを経て正式にRHCPの一員となったのが元ジェーンズ・アディクションのデイヴ・ナヴァロだ。そのデイヴを迎えて、(けっきょく)1枚だけ制作されたアルバムが、この「One Hot Minute」だ。プロデュースは前作に続いてリック・ルービンが行っている。

 とにかく、色んな意味でこのアルバムは「重い」。前作での、いわば「ネイチャー指向」ともいえる手触りから、一気にヘヴィーかつナーヴァスな感触が支配する世界へと変化している。

 デイヴ・ナヴァロのギターサウンドは、「BSSM」でのジョンのそれとは違い、音に厚みがあるし、緻密に、かつ重厚に作り上げていくタイプの音だと思う。ライヴの映像もいくつか見たが、はっきりいってジョンより安定してるし、危なげない。全体的に「そつなくこなす」印象が強い。その分面白みがない、という見方もできるだろうが、そこは個人的な好みの問題になってくるだろう。

 「Warped」「Aeroplane」等、非常にすばらしい出来の曲が収められている一方、やや装飾的で「くどい」印象の曲が多い。たとえば「One Big Mob」などはRHCPの本領発揮ともいえるハードファンクチューンだが、途中異常に長いスローテンポのパートが挟まれ、アップテンポのファンクパートの味を殺してしまっているように感じる。もっと簡潔な構成にしてもよかったのではないか。他の曲でも、アレンジ的に装飾的すぎ、凝りすぎ、のイメージは拭えない。「Coffee Shop」には「Mother's Milk」のいくつかの曲群に見られたような「イージー」なメロディーの印象を持った。

 ヘヴィロックファンとしての立場でいうと、全体的にセンスがよくてどの曲も「はずしてない」し演奏もよいのだが、もうひとつ切れ味が悪い。こんなもんじゃないだろう、というのが正直な感想だ。

 ぼくが個人的にかなりしんどい時期に聴いた、ということもあり、本作での、なんというか「重い世界観」を、よりいっそう深刻に受けとめてしまったように思う。真剣に聴いたが、本作を聴いて元気が出る、というようなことはなかった。そういう性質のアルバムではないのだろう。

 ヒレル・スロヴァクに続き、バンドはまた一人大切な人間をドラッグで失ってしまう。フリーの俳優仲間のリバー・フェニックスだ。リバーのことを歌った「Transcending」の最後の部分には、アンソニーの、発狂するのではないかというくらいの「叫び」が録音されている。これだけストレートに激しく感情を吐露した歌い方は、他のどの曲でも見られない。苦悩にのたうち回りながら悪態をつき、呪っている、といった感じだ。

Fuck the Magazine. Fuck the Green Machine. See the family.

 ここでの「マガジン」とはいうまでもなく雑誌メディアだ。「Green Machine」は不明だが、「Green」というところから見て(アメリカの紙幣は緑色をしている)、儲け至上主義のショウビズや、映画産業を差していると想像できる。デヴュー以来果敢に闘い抜いてきた彼らだが、ストレートに感情を表し、悪態をつく、というようなことは今までなかった。ここでは彼らが、その闘いに疲れ果て、苦しみ、もがいている姿がはっきりと見て取れる。

 このアルバムでは、長い間繰り広げられてきたRHCPの「闘い」が、完全に行き詰まったということが分かる。そして、次作「Californication」での「敗北宣言」へとつながるのだ。

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