The Red Hot Chili Peppers('84)

True Men Don't Kill Coyotes/Baby Appeal/Buckle Down/Get Up And Jump/Why Dont't You Love Me/Green Heaven/Mommy Where's Daddy/Out In L.A./Police Helicopter/You Always Sing/Grand Pappy Du Plenty

 地元L.A.では、フリーキーでど派手なパフォーマンスを見せるライヴバンドとして、すでに高い評価を得ていたRHCPが、メジャーのEMIと契約してはじめてリリースしたデヴューアルバム。オリジナルメンバーであるギターのヒレル・スロヴァクとドラムスのジャック・アイアンズは、他のバンドと掛け持ちをしていた事情もあって、デヴュー直前にバンドを抜けてしまう格好となり、急遽スタジオミュージシャンのジャック・シャーマン(G)とクリフ・マルティネス(Ds)を迎えて制作された。プロデューサーは元Gang Of Fourのアンディ・ギル。

 ゲイリー・パンターという画家をご存じだろうか。イヤな言葉だが、「ストリート感覚」のイラストレーションを描く人で、80年代初頭には日本でもよく紹介されていて、確か、いがらしみきおが彼のコミックに日本語訳をつけたものなどが発表されていたと思う(ぼくの記憶違いの可能性もある、なにしろ古い話なのだ)。ゲイリー・パンターはサードの「The Uplift Mofo Party Plan」でも描いているのだが、このファーストでもジャケットのイラストを描いていて、ぼくはこのイラストが好きだ。荒々しい線で描かれたRHCPの姿は、当時の彼らの、クレイジーなライヴの様子を的確に反映しているのではないかと思うからだ。数あるRHCPを描いたイラストレーションの中で、ひとつだけ好きなものを挙げろ、といわれたら、ぼくはこのファーストアルバムのジャケットを挙げるだろう。

 しかし、このアルバムの内容は、ジャケットのように的確に、当時のバンドの特徴を表すことに成功しているとは、とても言い難い。なによりシャリシャリしたニューウェイヴっぽいギターの音作りには閉口させられるし、全体的にドラムもベースもモコモコしていて音にまったく迫力がない。ニューウェイヴ自体を非難するつもりはないが、時代の流れはどうあれ、このバンドの特色というのは、まったく新しい「パンクとファンクの融合」であったはずだ。その持ち味を的確に把握できなかったのはプロデューサー=アンディ・ギルの落ち度であり、非難されても仕方ないといえる。

 RHCPがワーナーに移籍後、古巣のEMIからリリースされた「Out In L.A.」というアウトテイク集に収録されている、「Get Up And Jump」「Out In L.A.」「Green Heaven」「Police Helicopter」といった曲群を聴いてほしい。これらはアルバム収録ヴァージョンとは違い、バンドがデヴュー前に録ったデモ・ヴァージョンなのだが、実にすばらしいのだ。もちろんデモ・ヴァージョンということでラフで荒削りなテイクなのだが、当時のバンドのパンキーでクレイジーな一面が実によく出ていて、定評のあったライヴの凄さを想像させる出来となっている(これらデモヴァージョンを聴くためだけでも、このアウトテイク集を購入する価値はじゅうぶんある)。

 こういう新人バンドのデヴュー作を扱う場合、その爆発感はそのままに、稚拙で未整理な部分をうまく「売り物となるような」サウンドへと導いてやることこそ、プロデューサーの役目だと思うのだ。バンドの持ち味を活かせず、妙に玄人好みのするサウンドに押し込めてしまうだけなら、なんのためのプロデューサーなのだと言いたくなる。

 もっとも、アルバムに収録されている曲自体は、それほど悪くないし、本作を「駄作だ」とばっさり切り捨ててしまいたくなるほど、ひどい出来だとは思わない。ここに展開されているユニークな世界も、RHCPの一面だと言えば、確かにそうだ。しかし、やはり繰り返すが初期のRHCPのいちばんの特徴、面白さというのは、その「パンク」面にあったと思うのだ。それをきちんとアルバムで表現できなかったのは、なんとも悔やまれる。

 このファーストでのミスプロデュースでバンドは出足をくじかれる格好となり、ブレイクするまでに相当長い時間を要することになってしまう。

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