タツノオトシゴ―Dosedの歌詞に秘められた想い―

 事の次第はこうだ。アルバム「By The Way」正式発売前の7月7日、新作に収められている「Dosed」というバラードについて、女子高生ファンのさっちんがBBSに以下のような書き込みをしてくれた。

DOSEDの歌詞を読んでいるときっと気づくはずです!!「ん?どーゆー意味??」って。
明らかに浮いている言葉が登場します。そうアレです。日本語で○○○○○○○!!!
私スッゴク自信があるんですけどこの歌詞の意味に気づいた早さは世界で5本の指に入りますよ!?
スッゴイスッゴイ言いたいけどあんまりおおっぴらに言いたくないの!!
だって多分これに気づく人間なんて世界中探しても行って3桁ですよマジで。まあアノ人は
当然気づくだろうけど〜。B坊さんなら気づくかも!?
この意味が分かると次の意味も分かるんだよ〜〜ッ!!!!!!この歌詞に秘められた分かる
人しか分からない隠れたメッセージが!

 「Dosed」の歌詞は海外サイトで入手したらしい。すでに輸入盤は店頭に出ている段階だったが、mine-Dは国内盤を待っている状態だったので事情が分からず、さっちんに後々正解を教えてもらう約束だけしておいた。その後結局、アルバム入手前にさっちんから種明かしをしてもらったのだが、本当に驚いた。まず男のファンでは分からないだろう。うちのBBS常連であるB坊さんbunbunさんといった女性ファンがすぐに気づいたのと対照的に。では、「Dosed」に秘められた意味について、さっちんにレクチャーしてもらおう。

では「浮いてる」言葉を探してくださ〜い♪ヒントは2番の歌詞です。

DOSED

I got dosed by you
Closer than most to you
What am I supposed to do
Take it away I never had it anyway
Take it away and everything will be okay

In you a star is born
You cut a perfect form
Someone forever warm
Lay on

(Chorus) Way upon the mountain where she died
All I ever wanted was your life
Deep inside the canyon I can't hide
All I ever wanted was your life

Show love with no remorse
Climb on to your seahorse
This ride is right on course
This is the way I wanted it to be with you
This is the way I knew that it would be with you


(Chorus)

(repeat first verse)

I got dosed by you
Closer than most to you
What am I s'posed to do
Take it away I never had it anyway
Take it away and everything will be okay

分かりましたか?
正解はsea horse=タツノオトシゴです。・・・ってクイズじゃないんだから!!正解じゃないって(笑)! ココでいきなりタツノオトシゴとか明らかにおかしいですよね。タツノオトシゴは登れないだろって。

さて問題。
Q:アンソニーの大っ好きだった「アノ人」の立ち上げたブランド、SHAWN Clothingのマークは何でしょう?
A:http://www.shawnclothing.com/

ま、そーゆーワケですよ。それで私はこう思うワケです。(読むときは I think if ...なニュアンスで頼みます。笑)

Show love with no remorse

このloveは別れたことに後悔せずに友情としての愛〈love〉を見せて欲しいってこと。

Climb on to your seahorse

これはヨハンナにデザイナーとしてクリエイトし続け、成功して欲しいっていうメッセージがこめられてる。

This ride is right on course

rideは人生や運命のことで、それぞれの道を歩むために別れたけどそれは間違ってないってことを意味してると思う。

This is the way I wanted it to be with you

このwayはちょっと抽象的な感じだけどヨハンナと一緒にいたかったと思ってた自分が選びたかった道〈way〉でしょう。

This is the way I knew that it would be with you

これはその道を選べばヨハンナと一緒にいられることは分かっていたってこと。でも選ばなかった、と。


・・・ど、どうでしょうか??かなり緊張なんですけど(汗)。や、ただ私はこうかなって思ったってことで。 違う意見聞きたいです。お願いします。私の場合アンソニーファン的独走なんで。 歌詞を分析するの好きなんですよ。分かってますよ、何か特定な意味を持たせない方がいいってのは。 でもこれ聴いたらヨハンナ号泣だぁね(笑)。あんな引っ付いてたのにねぇ。←Off the MAP。カットしたいわ(笑)。

でも、タツノオトシゴ=SHAWNは合ってると思います!!!B坊さんも分かったし。 だからね、ファッション関係なんか気にも留めてない男性諸君は気づかないんですよ(笑)。

 「アノ人=ヨハンナ」とはRHCPのヴォーカリスト、アンソニー・キーディスが最近までつき合っていたガール・フレンド、ヨハンナ・ローガン(Yohanna Logan)の事。文中で述べられているようにファッション・デザイナーであり、「SHAWN Clothing」というブランドを主催している。さっちん情報によると二人は98年の10月頃からつきあい始め(当初ニューヨークとL.A.の遠距離恋愛だったとか)、今年(2002年)のおそらく1月下旬から2月中旬の間に別れてしまった可能性が高いという。

 さっちんの言うように、これはあくまで推察に過ぎない。しかし、明らかに歌詞中で浮いている「タツノオトシゴ」という単語を考えるにつけ、この曲においてアンソニーがヨハンナの事を歌っている事に間違いはないと思える。そういえば「Rockin' On」誌7月号のインタヴュー中、ジョンのこんな発言があった。

「実はこのアルバムを書き始めた時って、アンソニーはある女の子と深い仲に落ちていたんだけど、曲が完成して、いざヴォーカル録りって時には、彼女と別れちゃってて。でも、それが逆にいい意味でアルバム全体に緊張感を与える結果になったと思ってるんだけど。彼が恋に落ちていた女性に対して書いた詞に、ヴォーカル録りの時に、期せずしてより感情的な思いが込められていることになったっていう。実際は、ふたりはもう別れていて一緒にはいられないっていう状態だったわけだから」

 歌詞はつき合っていた時期に書かれたのでは…という疑問が生じるが、これについてはヴォーカル録りの時点でアンソニーが詞を書き換えた可能性が高い。というのも、「Take it away I never had it anyway どこかへ持っていってくれ。これ(=この恋)は最初からなかったものなんだ」あるいは「she died」など、別れを暗示する節が多いのと同時に、「In you a star is born and You cut a perfect form and」といった前向きな節も見受けられるからだ(「star is born」と時制が現在形なところに注目)。ある意味、歌詞が全体としては整合性を欠いていて、アンソニーの混乱、悲しみを表しているとも言えるだろう。余談だがヨハンナの職業を考えると「You cut a perfect form」は頷ける。

 さて、それでは日本語盤の翻訳を担当している「国田ジンジャー」氏は、この歌詞をどんな風に訳したのだろう。見てみよう。問題の2番の歌詞だ。

哀れみのない愛情を見せる
君のタツノオトシゴにまたがる
思い通りの進路だ
君とこんな風になりたかったんだ
君とこんな風になると分かっていた

 こらこら、またがってるんじゃないよ、タツノオトシゴに。しかも恋が成就したような、前向きの内容になってしまっている。まったく反対の意味になってしまっているのだ。確かにファンでもない国田氏にヨハンナやSHAWN等の背景事情が分からなかったのは仕方ないと言えるし、前述したような「混乱した」歌詞に惑わされてしまった面はあるだろう。しかし、これが「別れた女性への思いを綴った歌」である事くらいは押さえてほしかったし、そもそも「Show love... Climb on to...」というのは命令形であって、これを「〜を見せる。〜にまたがる」などと訳すのは文法的に見ておかしい(「Showing...」となってるなら分かるが)。根本的にスキルとモティヴェイションが不足しているのだろう。自信もやる気もないなら、仕事を受けなければいいのに。

 さて、「タツノオトシゴ」の謎についての、さっちんによる「推理」は以上だ。しかしその後のメールのやりとりで、「今回の国語のテストの範囲に東下りがあったんですけど和歌の修辞法習ったんですね。縁語とか掛詞とか。でDOSEDの歌詞見て表現の仕方が似てると思ったんですよ」という話になっていった(ちょうどテスト中だった彼女)。面白いと思ったのでその辺りもまとめてもらえるよう頼んでみたら、これまた興味深いものを送ってくれたので、以下に転載。

●和歌の修辞法● 東下りとDOSED

唐衣 きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる 旅をしぞ思ふ

Show love with no remorse
Climb on to your seahorse
This ride is right on course
This is the way I wanted it to be with you
This is the way I knew that it would be with you


≪縁語≫・・・一つの言葉に意味上縁のある言葉を使って表現に面白みを出すこと。また、その縁のある一組の言葉。
唐衣が中心になって「きつつ」は「着つつ」。「なれる」は「慣れる」。着物が新しくなく馴染んでること。
「つま」は着物の「褄」。「はるばる」は「張る張る」。昔着物にノリをつけるとき板に着物を貼り付けていたからだったと思う。ここから着慣れた着物にノリを付けている様子を取ることが出来る。

seahorseが中心になってclimb on toでseahorseの上に登るということになる。seahorseに乗って行く道はコースに沿っている。wayとcourseでそのまま走って行く道のこと。ここからタツノオトシゴでどこかへ進んでいく様子を取ることが出来る。

≪掛詞≫・・・1つの言葉に2つの意味を持たせる。
なれにし・・・着物に慣れる/慣れ親しんだ
つま・・・着物の褄/妻
はるばる・・・張る張る/遥々

climb・・・登る/昇進する
seahorse・・・タツノオトシゴ/ヨハンナのブランドのマーク
ride・・・走ること、単純にドライヴ等の意/ドライヴを人生や運命に例えている
course・・・コース/人生で歩んでいる・歩むべき道
way・・・道/人生の選択肢

≪意味≫
「着物を着慣れるように慣れ親しんだ妻がいるので遥々遠くやってきたこの旅がしみじみ悲しく思われる」

「本当は一緒にいたかったし、いることも出来たけどそれぞれの道を選び別れたのは間違いではない。これからも友達でいて欲しい、デザイナーとしての成功を祈っている。」


・・・あんまり2つを並べた意味がないまとめ方になっちゃったけど比較するとこんな感じで。ハッキリ言ってかなり高度なワザだと思います。在原業平ですよ(笑)?で、私的にはヨハンナにはアンソニーからBTWが送られてくると思います(笑)。アンソニーがライヴでSHAWNの服着てたこととかインタビューであまりにヨハンナのことを語りまくってることからするとイイ関係が続いてるからこそだと思うんだけど・・・。

あ、あと和歌のほうは「かきつばた」で節句になってますよね。それはアンソニーの場合いつものように韻を踏んでいることと同等の技術かと思います。

 …さっちん。あんたは本当にグレイトだ。ここまで歌詞を分析、吟味できる音楽ライターがどれだけいるか。しかも16歳?いまだに信じられない。ちなみに「かきつばた」が節句というのは文中で述べられている在原業平の句「唐衣 きつつなれにし…」のそれぞれの頭文字を拾っていくと「か き つ ば た」となる事の意味。ちなみに「東下り」というのは「伊勢物語」の中の1パート(らしい。今慌てて調べた。古文は苦手だったのだ)。それから、当然お気づきだと思うがアンソニーの歌詞は「remorse, seahorse, on course」の3つの単語で韻(rhyme)を踏んでいるのだ。

 いずれにせよ、まず誰も分からなかったであろう「タツノオトシゴ」の謎を解き、和歌との対照比較までしてくれたスーパー女子高生、さっちんに今一度大きな拍手を。パチパチ!あんたすごいよ、マジで。


 さて、上記「タツノオトシゴ」の謎解きを読んでくれたしまけんさん(「活きの良いヒゲあります」)が、また違った見方を提示してくれたので、紹介したい。

ただ、感心した上で敢えて新しい意見を書きたいんですけど、これって見方によっては全くハートウォーミングではない、物凄い恨み節ですよね(笑)。仮にアンソニーのラブストーリーを知らないで、英語に忠実に訳すとどうなるか(国田ジンジャーは論外)をちょっと考えてみたいと思います。

するとまずClimbが引っ掛かる。
さっちんさんが言うように、これは明らかに国田ジンジャーが翻訳した「またがる」ではなく(笑)、「社会的に成功する」という意味のClimbであることはアンソニーの個人的な事情を知らなくても文脈を見ればわかる部分だと思います。
ただ、「社会的に成功する」っていう意味で使われる場合のClimbって大抵ネガティヴな意味なんですよね。"social climber"とか、上昇志向の強い嫌なヤツ、みたいな感じで皮肉っぽく言う表現だし。

これを基点に見ていくとno remorseも「後悔しない」というよりは「振り返りもしない、血も涙もないよ」的な非常に強い、通常はネガティヴな意味で使う表現だと気付きます。
で、歌詞を読む限りno remorseはshow loveを受けているわけだから、no remorseという感情を示しているのはアンソニーじゃなくて相手である元恋人のほうなので、「アイツはまじで血も涙もねえな」っていう隠喩と取れなくもないわけです(笑)。

その方向性でネガティヴに見ていくとright on courseってのも表現としては「決まりきった道を行くのね、はいはい大正解」的な表現じゃないですか。courseは確かに「人生行路」みたいな意味もあるし、on courseで「進路通りに」となるんですが、普通他人の人生をrideなんて言葉で表現するのは結構失礼だと思うんですよね(笑)。「ただ乗り」みたいなニュアンスで。

で、最後はThis is the way+過去形で「叶わなかった願望」。これも結構「あー、上手く行かなかったなー。君はいつもそういうやり方なんだよね」みたいな文句言う時に使う表現じゃん(笑)。

ということで、僕はさっちんさんの言うような「元恋人に暖かいエールを送る素敵なアンソニー」という歌詞の意味を認めつつも、同時にこれは「とはいえ、まあ、ちょっと恨み言のひとつも言いたいといえば言いたい」みたいなカワイイ恨み節でもあると思うのです(笑)。
悪気はないんだけど、ちょっと別れた女の子にこの際文句のひとつも言いたい。
素直に相手の成功を祈りつつも、そんな気持ちも二重に秘めた歌詞じゃないかと。さっちんさんが指摘したタツノオトシゴに女性の方が反応したように、この気持ち、男の人ならわかるんじゃないかなー、とか。思ってみたりして(笑)。

 面白い。「remorse」を辞書で引いてみると確かに「without remorse」で「情け容赦なく」という意味がある事が分かる。あるいはセンティメンタルな失恋ソングの中に、そういった恨み節の思いをこめてみたくなったのかもしれない。

 ただ、次の「ride」はヨハンナの人生ではなく、「二人で決めた別れ」という選択を意味していると思うので、ここは少し違うかもしれない。「Your ride」ではなく、「This ride」となっているワケだし。だからおれとしてはやはり「二人で決めたこの選択(別れ)は間違いじゃないよ」っていう意味だと思うのだが。あとは、メロメロの曲調とあまりにもといえばあまりにもなアンソニーの女々しい(敢えて言うけど)歌い方を聴いていると、そうした皮肉めいたメッセージは、それほどこめられてないような印象を受ける。もちろん、アンソニーの中にそうした「恨み根性」がまったくなかったとは言えないだろうが。ちなみに、噂だがアンソニーとヨハンナが別れた原因は、アンソニーがヨハンナに子供を産んでほしいと願ったけど、ヨハンナがそれを拒否した…というものらしい。

 いずれにせよ非常に面白い指摘だった。しまけんさんありがとう。