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#6 CCCDってどうよ

mine-D: どもども。この対談も、ずいぶん久しぶりだね。

今回は、ネットにおける著作権の問題を考えてみたいと思うんだ。というのは、このところ内外のレコード会社がCCCD(コピーコントロールCD)をいくつもリリースし始めているという状況があって、それはぼくらにとってかなり身近な出来事になりつつあるし、ネット上でもそれに付随する議論や主張がたくさん見受けられるようになってきているからね。

Silverboy: いやいや、久しぶり。僕もようやくCDが焼けるPCを手に入れたと思ったらこれだからね。僕は別に新しいCDを借りてきてCD-Rにコピーしようとは思わないけど、それでも好きな曲ばっかり集めてオリジナルCDを作ったりするのは趣味だからね。

mine-D: 「CCCDとはなんぞや?」という人もいるかもしれないね。PCでリッピング(オーディオCDから音楽データをデジタルデータのまま読み出して、コンピュータのファイルなどとして取り出すこと)できないように手を施したものらしい、と。Silverboyと交換日記をされているjasmine girlさんが2003年1月27日の日記に書いておられたように、「手持ちの機器では再生できないかもしれない、再生できたとしても機器の寿命を縮めてしまうかもしれない、また、保証をしてくれるところもどこにもない」という所が、問題点として指摘されているんだよね。

Silverboy: 普通のCDプレーヤーじゃ聴けないかもしれないってこと?

mine-D: 「ほぼ日刊イトイ新聞」に目鷹ひろみさんって方が書いておられたコラム…これはかなり詳しく取り上げてて、いい記事だと思うんだけど…ここから抜粋させてもらうと、

  • パソコンだけでなく、一部のCDプレーヤーでも再生できない(カーオーディオやポータブルCDプレーヤーでは再生できないモノがかなりあるそうです。)
  • オーディオメーカー(プレーヤーを作っている側)はCCCDの再生は保証していない
  • レーベル(古い言い方ではレコード会社)の方でも再生できなかった場合の返品は受け付けていない
って事らしいんだよ。それはちょっとひどいんじゃないかって思うけど…。

Silverboy: つまりそれは、普通のCDじゃないってことなんだろな。一応の互換性は確保しているはずだけど、確かなところはなんとも言えません、と。で、仮にあなたの持ってるプレーヤーで再生できなくてもそれは諦めてね、ってことだろ。そういういい加減な規格を堂々と流通させるところがすごいといえばすごいな。

mine-D: そうだね。CCCDは厳密には「CD」とは呼べないみたい。CDの規格は公開されていて、通称「レッド・ブック」と呼ばれる仕様書があるらしいんだけど、それに準拠していない、その規格からは外れてしまっているもの、という事なんだね。コピー・ガードのテクノロジー自体がまだ確立されている段階とは言えないみたいだし、何種類かの手法を各社がバラバラに使用している、という現状らしい。その、コピー・ガードを開発している会社ってのも、なんだか聞いたことないようなところでねぇ。「どうにもなぁ…」という印象は受けるよね。そうそう、ネットで見られるCCCD情報サイトを紹介しておこう。「muplus.net」さんの「CCCD Channel 」や、「C堂」さんの「CCCD特集」なんかが詳しいね。また見つけたら紹介します。

ところで、SilverboyはたくさんCDを買ってると思うんだけど、「買ったCDがCCCDだった」という経験はあるの?

Silverboy: それはないなあ。そういえばこないだ何か買おうとしたらCCCDだったんでやめたような気がする。何だったかなあ、洋楽の国内盤だったんだよ、確か。輸入盤が正規CDならそっちを買おう、と。最近国内盤の方が先行発売されたりするからなあ。

でも、これから増えてくるんだろうか、やっぱり。僕は何だか過渡的なもののような気がするね、いや、根拠ないけどさ。

mine-D: 「DVDオーディオ」なんてのもあるみたいだけど、まだ圧倒的にハードの普及が足りないみたいだね。

CDが出始めたのって、おれ達が高校生の頃だったと記憶してるんだけど、あの時はまさか将来「自分で手軽にCDを作れる時代」が来るなんて思ってもみなかったもんね。さらに言えば、今みたいなネットで楽曲をやりとりできる環境なんてのも、まったく想像できなかった。そういう意味では、Compact Discってのは「早すぎたデジタル・メディア」と言えるのかもしれないね。

Silverboy: そうそう、思い出したよ、ジョニー・マーのソロだったわ。あれってCCCDなんだよ。まあ、もともとあんまり国内盤は買わないんだけど、特にCCCDだということで一気に萎えたのは確か。視聴機で聴いた分にはよかったんだけどね。まあ、視聴機でヘッドホンつけて大きい音で聴くとたいていのCDはよく聞こえるんだけど…。

いや、話がそれたけどさ、メディアの移り変わりって早くなってるしね。その中でCCCDだと言ってみたところで、いずれもっと洗練されたコピーガードの技術なんかも出てくるだろうし、一方でコピーガード破りなんかも絶対出てくるんだから、メーカーもなんかそんなもんに力入れてるより発想の方向を変えた方がいい気がする。

mine-D: おれなんか、仮に今レッド・ホット・チリ・ペッパーズの作品がCCDで出たりしたら、困っちゃうよ本気で。今、家にある「CDを再生できる装置」っていや、PC(しかもMac)と、ポータブルCDプレイヤーしかないんだもん。MacもポータブルCDプレイヤーも、CCCDを再生できない可能性がかなり高いみたいなんだよね。おれみたいな人間はレコード会社の考える「客」の中には入っていないんだよ、きっと。

確かに、メーカーの方向性として、こんなものに力を入れるのは激しく間違っている気がするな。そもそも、CCCDを導入する理由として各社が挙げているのが「デジタルコピーが増えたせいでCDの売り上げが落ち込んでいる」というもので、そう言われると「ああ、そうかな」と単純に信じてしまいそうになるんだけど、果たして本当にそうなんだろうか?という辺りを考えてみたいんだけど。

Silverboy: それってさ、僕らが高校生の頃、貸レコード屋が出てきたときにも同じことが言われてなかったっけ。みんながレコードを借りてカセットに録音するからレコードが売れない、と。でも結局レンタルCDというのは今や社会的に認知された商売だよね。

mine-D: そうそう。同じ事言ってたよね。でも今はレンタルショップなんて当たり前のように存在するし、ここまで一般化してくると、レンタルショップだってレコード会社にすれば大量購入してくれる「お得意さん」でもあるワケじゃない。

で、20年の間そうした状態を「個人使用目的の録音に限り」っていう「建前」でもって黙認してきたコピー行為を、なぜ今になって大騒ぎして取り締まろうとしているかって点なんだけど、まずひとつには、PCを使ったコピーだと、CDと同じ質を保ったまま何度も複製できるっていう、デジタルメディア特有の理由が挙げられると思うんだけど、この辺りはどうだろう?

Silverboy: そうだね、あと、複製がとても手軽にできちゃう点もね。CDをカセットに録音しようとすると、CDを一度最後まで聴かなきゃならないけど、PCでCD焼くのなんてそんなに時間かからないもんね。

でも、メーカーが一番懸念してるのは、そうやって複製された音楽が、ファイルとしてネット上で交換されることだと思うんだな。そうすることで、個人がそれぞれCDから録音しているのとは比較にならない規模でコピーが出回ることになるし、それが売上げに影響するかも、というのは分からないではないよな、確かに。

mine-D: 確かにね。ネットという場が出現した事で、友達同士、という関係性だけではなく、不特定多数の人間相手に音源をやり取りできてしまう状況になったワケだからね。1枚の新品CDから取った音源が何人の手に渡るか、という観点から言えば、ネットの影響というのは無視できないものがあるだろうね。

ただ、ユーザ数という事を考えてみると、PC保有者とMDコンポ保有者とでは、まだまだ差があるんじゃないかと思うんだよね。いくらPCが普及したといっても、一式揃えようとすると15万くらいはかかるワケだけど、MD付きステレオなら、安いものだと2,3万くらいからあるでしょ?そう考えるとユーザ数そのものにかなり差があると思うんだよね、現時点では。ましてや、Win MXやWinnyなんていうファイル交換ソフトを使って不特定多数の人間と音源ファイルの交換をしているユーザに絞って言えば、これはちょっとMDユーザとは比べものにならないくらいに少ないんじゃないかな。

Silverboy: そう、結局はそういうファイルのやり取りで、ほんとは買うつもりだったCDを買わずに済ませてるヤツがどれくらいいるのかっていう話で、それはそんなに多くないはずだよね。確信犯的に音楽を「盗んで」いるヤツはCCCDのコピーガードなんて何とでもして破れるんだろうし、そういうヤツらの存在を問題にして中途半端なCCCDがその対策だって言うんだとしたらお粗末な話。

mine-D: だよね。そうした「ごく一部」と言っていいヤツらへの対策のために、その他大勢のイノセントな顧客の利便性を著しく侵害しているワケじゃない。その辺、もうちょっと考えてみてもいいんじゃないのかな?レコード会社も。誰のためのCCCDなんだ?と。なにかもう、見境がなくなっているとしかいいようがないもん、今の状況って。

Silverboy: それにさ、そのCCCDなんだけど、これが結構簡単にMP3に落とせるらしいじゃないか、聞いたところによると。WINDOWSに標準でついてる「Windows Media Player」とかRealNetworksの「RealOne Player」なんかで、特にさしたる隠し技もなく普通にエンコードできるという噂。なんじゃそりゃ、って感じもするんだけど。

mine-D: うーむ。そうなってくると、ますますユーザにとっては「百害あって一利なし」だよね。それにさ、レコード会社の言い分として「アーティストの利益を守るため」というのがよく聞かれるんだけど、これって完全に「(自分達レコード業界の)利益を守るため」っていう本音が透けて見えるよね。アーティスト自身がこの問題に言及するのは少ないように見受けられるんだけど、発言しているアーティストの中では吉田美奈子氏が積極的にCCCDを肯定しているくらいで、他は概ね否定的な意見が目立つ。まあ、立場上あまり声を大にして言えないアーティストも多いんだろうけどね。

いずれにせよ、CCCD化が単に業界の利益保護のため、という性格を持つのは間違いないと思うし、それを裏付けているのがチャチいテクノロジーだとしたら本当にタチの悪い話。だからこそみんな怒ってるんだろう。

Silverboy: まあ、業界が自己防衛策を講じるのは仕方のないことだし、ある意味それがアーティストの経済的利益を守ることになるのは一般論的にはそうなんだけど、どうもCCCDに関しては拙速というかガタガタやってる割に効果は薄くて弊害ばかり大きいような気がするんだよね。やり方が稚拙というか。

CDが売れなくなっているという言い方もよく聞くし、PCによるファイル交換やCD-Rによるコピーがスケープゴート的にヤリ玉に上がっている訳なんだけど、仮にCDが本当に売れなくなっているとして、それはそうしたPCによる音源の共有化のせいなんだろうか。どう思う?

mine-D: CDがどれくらい「売れなくなっている」のかって話なんだけど、ちょっとこのページ(2002年1月13日付記事)を見てみよう。「とある弁護士の独白」とタイトルが付された…これは日記サイトだと思うんだけど、以前ニュースサイトで紹介されていたのをブックマークしておいたんだよね。この方の指摘では、「落ちている」と言われている昨今のCD売り上げ枚数も、90年代前半と比べるとまだ上回っており、要は1997〜8年頃の売り上げが異常に多かっただけなんじゃないか、という話なんだよ。

なぜ90年代後半に売り上げが爆発的に増えたか、についても興味深い考察をしておられるんだけど…これってさ、言ってみればCD業界に「遅れてやってきたバブル」みたいなものなんじゃないのかな。そう考えると、バブルを基準にものを考えるなんてのは問題外だし、世の中全体がこんだけ不況だリストラだ自殺だ言ってる時代にね、見方によっては「以前のペースに戻った」だけの売り上げを、「落ちた落ちた」と大騒ぎして安易にCCCD導入へなだれ込むってのは…どうにもねぇ。ましてや、槍玉に挙げてる「ネットでのダウンロード」を実践しているユーザ数が…さっき話したようにけして多くはない事を考えると(まあ、この辺の実態数は調べようがないという面もあるけど)、本当に何のためのCCCD導入なんだ?という気はしてくるよね。なんか別の意図があるのかね。

Silverboy: 僕としてはたぶん、別の意図があるというよりは、レコード業界の現状分析と対応が甘いというかいい加減なだけだと思うよ。

例えばエラい人が、「○○君、CDの売り上げ、前年を下まわっとるようだがどうなってんのかね、あ〜ん?」「社長、実はCDがPCでコピーされているようでして、その影響かと…」「なに?けしからん。で、手は打っているのか」「もちろん、CCCDというのを投入する予定です」みたいな、さ。

で、1年ほどして、「○○君、CCCDを投入した割に売り上げは伸びてないようだが…」「そうなんです、どうもPCでのコピーは売り上げ低下の主因ではなかったようで…」なんて感じだったりしてね。サラリーマン社会の典型を見るようだわ。

mine-D: ああ…本当にありそうだから怖いよね、そういうやり取り。実際、CCCD導入でどれくらい売り上げが「向上」したのかってデータを見てみたいね。でもまあ、今さらCCCD技術がカスで問題ありだと分かったところで、レコード会社としてはいったんやり始めた事だし、もう後には引けないって部分はあるだろうね。意地もあるだろうし。でもなぁ、もう少し購買者の声に耳を傾けんかい!とは思うよな。

Silverboy: 僕がいちばん問題だと思うのは、このCCCDがCDとしての規格を満たしてないってことだな、やっぱり。一応CDプレーヤーで聴けるようには作ってますけど厳密にはCDじゃないから聴けないこともあるかもしれません、あしからず、ってことだろ。「COMPACT DISC」マークもついてないし。僕としてはコピー云々の問題より、業界とユーザーがここまで築き上げてきたCDというメディアへの相互信頼を、そんなに簡単に、一方的になし崩しにしていいのかということの方が重要だし腹立たしい。

mine-D: そうだよね。山下達郎氏なんかはCDでさえ音がひどい、それをここまで何とか工夫してやってきたのに、今さらCCCDなんて問題外、みたいな事を言ってるね。あまりにも一方的で乱暴なやり方だよね。

あと、おれが思うのはテクノロジーの進化を逆行させる事はできないんじゃないかって事。例えば、以前知ったんだけど、あるアマチュアバンドは録音した自分達の曲をアルバム1枚分くらいCD-Rに焼いて、希望する人には完全無料で配ったりしてるんだよ。当然ネットでMP3を配布、なんていうやり方もあるワケだし。以前だったらシロウトが自分でCDを作ったり、楽曲を流通させるなんて事は想像もできなかったんだけど、今やそうした事ができる時代になっているワケでしょう。こうした流れっていうのは、もう止める事ができないと思うんだよね。そうした趨勢をきちんと読みとる努力をせず、つまらないテクノロジーでもって時代の流れに逆行しようなんてのは、愚かとしか言いようがないね。

Silverboy: 結局、音楽業界がそういう音楽配信の多チャンネル化を商売としてつかまえきれてないということなんだと思うね。このままじゃ音楽を売るという商売そのものが成り立たなくなるんじゃないかという危機感が彼らをピントのはずれた対応に走らせているんじゃないかという気がする。

でもさ、きちんとしたクォリティ・ミュージックを、相応の対価を取って流通させるという音楽産業の意義そのものはネット時代にも失われる訳じゃないし、結局は彼らがそういう世の中の変化をどうビジネス・モデルとして組織できるかということなんだから、端的に言ってしまえば既得権を守ることに汲々とし過ぎて新たに商売を展開する工夫が足りないということかな。

mine-D: 最近AOLとか米アップル社なんかがようやく「使い物になる」ネット音楽配信サーヴィスを提供し出したみたいだけど、そういうのってレコード会社がもっと早い段階から努力していてもよかったはずだよね。それにさ、ネットじゃなくて、CDを購入する喜びってもあるじゃない。質のいい紙に印刷されたブックレットの、歌詞や写真を見ながら新しい音楽を聴くってのは、やはり特別な体験だと思うしね。そういうCDを作るのは、資金力のあるレコード会社にしかできない事だし。

Silverboy: そうだろ、ネット時代ならネット時代でビジネス・チャンスはあるはずなんだよ。膨大な旧譜のカタログも持ってるわけでさ、例えば廃盤になってるアルバムの再発をネットで受け付けて1枚だけCD-Rに焼いて送って上げたりとか、大手レコード会社が提携してアラカルト方式のプライベート・オムニバスの注文生産に応じたりとか。

新譜だってもっと局地的な人気に焦点を合わせた少量多品種生産とか、そういう付加価値の付け方ってまだまだあるはずだと思うんだよね。そうやってメニューを多様化した方が、一発の大ヒットに依存するより経営的にもリスクが分散されて安定するはずだと思うんだけど。

CCCDというのは、そういう努力をするより、旧来の商売の器にコンテンツを無理矢理押し込もうとする方向性だよな。

mine-D: 柔軟な発想の転換ってのがないんだよなぁ。今Silverboyがいったようなアイディアだって、本来レコード会社の方から出てこなきゃおかしいんだよね。なんのためにたくさんの社員を抱えてるんだ、と。レコード会社の人には今のSilverboyの意見をしっかり読んでもらって、自分達の認識が、今の時代感覚からずれていないか、一度じっくり考えてほしいよね。ネットとかスカイ・パーフェクTVのような個別化した「オンデマンド」なコンテンツ配信形態が、これだけ受け入れられている事の意味も考えてほしい。「大ヒット依存」的な画一的大量生産方式がうまくいかなくて売り上げが落ちたからと言って、それをユーザに責任転嫁するなんて言語道断だよ。要は時代の流れを読む力がない、企業努力が足りない、って事だろう。

あと、冒頭に取り上げた「ほぼ日刊イトイ新聞」のコラムでも取り上げられていた事なんだけど、ネットのようなコンピュータ・カルチャーの世界においては、昔からリチャード・ストールマンに代表されるような、「フリーソフトウェア」思想なんていう「アナーキック」な価値基準が厳然として存在してきたワケだよね。「すべてのソフトウェアは無料で提供されるべきである」っていう、ね。楽曲がデジタル・データとして扱われるようになった以上、ある局面ではこうしたフリー思想世界の価値基準で取り扱われる事も避けられない、という事は起こってきているだろうね。まあ、場合によってはほとんど資金をかけずに作れてしまうコンピュータ・ソフトウェアと、きちんとしたものを作ろうと思ったらけっこうなお金がかかってしまう商業音楽を、同列で論じる事は、ちょっとフェアではないと思うけどね。

Silverboy: フリーウェアの思想というのは、ソフトの開発者とユーザーがクロスオーバーしていて「お互い様」の側面が強い小さな共同体では有効だと思う。オレの作ったヤツ使っていいからオマエのもちょっと使わせてくれる?って感じで。だけど、他人がそれなりの資本を投下して製作したものに一方的にただ乗りするっていうのは僕はどうかと思うんだよね。付加価値のあるものにはきちんと対価を払うことで我々の生活が成り立っている訳だし。これってフリーウェアの本質を理解しない意見かな。

mine-D: 例えばインターネットのサーバ・ソフトウェアという分野に限って言えば、今大部分のサーバOSとしてはLinuxが採用されているよね。で、実際にはRed Hat社なんかのようにLinuxを使ったビジネスも成立している、と。IBMなんかの大企業もLinuxの使用を前提としたビジネス戦略を打ち出したりしている。だからフリーウェアという存在そのものが、今Silverboyが言ったような親密な共同体の中だけで通用する思想ではなくなってきているような印象は受けるんだよね。

フリーウェアでよく取り沙汰される問題は「それなりの資本を投下して制作したもの」がすなわち「いいもの」かどうかって事なんだよね。これは、「必ずしもそうじゃないかもしれない」という事にみんな気づいてきている。大金を投じて作られたものより、みんながよってたかって作り上げたものの方が出来がいい事もある、と。ただ、こうした「思想としてのフリーウェア」は、コンピュータのソフトウェアという限定された世界だけに通用する話と言えるだろうけど。

Silverboy: なるほどね。僕なんかは価値のあるものには相応の価格が存在することでグローバルな価値の交換が可能になるし、ある種のフェアネスが達成されるという、素朴な資本主義を信じているからその辺は難しいところだな。「カネの前にすべては平等である」という。だからボランティアなんかもそういう価値体系を歪めるから好きじゃないんだよね。本来価格が存在してしかるべきサービスをだれかが無償で提供することによって、そのサービスでメシを食っている人が疎外され、フェアなマーケットの形成が妨げられると僕は思う訳。

mine-D: なるほど。一定のルールが存在しない世界ではフェアな価値交換は成立し得ないだろうしね。そこで通用する共通価値が「カネ」という事だね。タダであげますよ、という事になっちゃうとルール無用の無秩序状態になってしまう…。その危惧は理解できるようにも思うなぁ。

まあ反面、資本主義の世界では「力を持つ者による資本や情報の独占」という事態が起こる可能性が否定できないし、おそらくは今話してきたような「フリー思想」も、そうした現象に対する反感が元になっているんだろうけどね。

例えば自分がやってるようなサイト運営を考えてみると、おれはそれでお金を儲けようという気がないんだよね。いやまあ、おれの書いたものが売り物になるかどうかって話は別にしてね。中には個人でもそうした事を考えて実践している人がいて、それはそれで意義のある事だと思うんだけど、少なくとも自分自身に関してはいちばん最初に「サイトを作ろう」と考えた時点から今に至るまで、そういう意識がまったくないんだよね。

理由はよく分からないんだけど、ネットではそれが当たり前になっている。でも、そうした価値観がすぐにでも資本主義的価値観を駆逐するかといえばそういうワケでもなくて、なんというか場面場面に応じた使い分けがされていくんじゃないか、という気もするんだよね。…かなりCCCDの話からは離れちゃったけど。

Silverboy: うんうん、僕も例えば自分のサイトで購読料を取ろうという気はまったくないんだよね。ま、趣味でやってるモノだからってこともあるんだけど、なんでだろ、それはネットが情報流通のサブチャンネルとかカウンターカルチャーであるべきだという意識があるからかもしれないね。資本主義的な原理に支えられた既存の社会に対して、無償であることを前提にした共同性が構築できるんじゃないかと。

でも、現実にはネットにも既存の経済原理が持ち込まれてるよね。ファイル共有なんかの、ある種原始共産主義みたいな思想と、カネを取って音楽を生産するメジャー音楽産業が同じプラットフォームの上に同居してる訳で、そりゃまあ摩擦も起こるわな、と。

なぜかといえば、もともとはもっとのどかで理想主義的だったネットが、ツールとして商業主義にとっても魅力的だったということなんだろうな。ネットがもっと技術的に特権的なモノだったら、そこの棲み分けは平和に行われてたんじゃないかと思う。

何となく、グローバリズムを巡る議論と似てきたな…。

mine-D: 元々インターネットってのは大学や研究所同士を結ぶ、小規模なつながりでしかなかったんだけど、ある時期に商用利用が許可されて、一気に広まった…んだっけな、確か。今Silverboyが言ったような「異なる価値観を持った思想同士が同じプラットフォームに同居してる」ところが、ネットという場所のいちばんの特徴だと思うし、まあ、それがある時は面白いんだけど、時には面倒な事態を引き起こす事もある…というか、な。そういう感じだろう。CCCDの問題も要するに「違う価値観同士のぶつかり合い」なんじゃないのかな。

Silverboy: まあ、「異なる価値観を持った思想同士が同じプラットフォームに同居してる」という意味ではこの世界の成り立ち自体がそもそもそういうもんだけどな。ただ、CCCDの問題について言えば、僕たちはカネを払ってそれを購入するユーザーであり消費者だろ。だから払ったカネに相当するモノを手に入れる権利があるし、それに対してモノを言う正当性がある訳だよな。それがないがしろにされてる気はするね。

さっき言ったことを補足すると、やっぱりネットが無償だというのは、そういう対価性を基礎にした責任から自由であるべきだということなんだよね。無償なんだから責任は負わないよ、と。情報にせよソフトにせよ、そこに流通しているモノは無償である代わりに何の品質保証も動作保証もない、玉石混淆で中には悪意のあるモノさえ混じっているかもしれない。でもそれを自分の目で見極めて選び取って行く、まさに自己責任と自己決定からなる本質的な自由、風通しのよさが僕はネットの本来的な性質だと思う訳。

CCCDはカネを取って流通させる以上、ユーザーが納得できて満足できるモノでなければならない。それにしてはお粗末すぎる、「売る」べきモノじゃないってことだろう、やっぱり。

mine-D: うんうん。あくまで「カスタマー」だからね、レコード会社のCDを買う人達は。それにしちゃCCCDってのはあまりにも顧客の立場をないがしろにし過ぎてるし、顧客の意見を聞こうという姿勢も感じられない、と。レコード会社がそれを強行する際に、ネットのような「自由主義思想」の存在を言い訳にはしてほしくないな、という気はするね。

周りの状況がどうであれ、「企業と顧客」という本来の関係性に変わりはないはずだし。

Silverboy: 仮にネット上のファイル共有がレコード会社の売上げに本当に打撃を与えてるんだとしても、それは一般のユーザーに不便を強いる言い訳にはならないはずだと思うんだよね。ユーザーが待ち望んでるアーティストの新譜を、例の「COMPACT DISC」のロゴのつかない怪しげな規格でしか提供しないメーカーは本来カネを取る資格がないと思う。

mine-D: そう。もうさ、ここで話していても現場には届かないかもしれないんだけど、少なくともネットを見ればCCCDに対して、みんながどんな風に思っているかというのは分かると思うしさ。それはけっして「不法ユーザーの自己弁護」なんかじゃないんだよ。ただ単に「ワケの分からないもん売りつけるな」って意見なんだよね。それをもうちょっと真剣に考えて、これからCCCDをどうするのか、ちゃんと考えていってほしいよね。ま、「聞く耳を持っているなら」の話だけどね。

まあ、とりあえずおれ個人としてはCDDA(通常のCD規格)じゃないものは買わない…というかウチの状況じゃ買っても再生できないから意味無いんで、そういう「不買」方針で行くと思います。そんなワケの分からないものにお金なんて払いたくないし。

Silverboy: ああ、僕はそれしか出てないと買っちゃうなあ、たぶん。それしか選択肢がないっていうのが不愉快なんだけどね。いずれにしても、実際にカネを払ってCDを買うユーザーとしては、そんなけったいなものを売りつけるな、ということだね。

mine-D: おれの場合は…今の状況だと確実にCCCDは再生できないからなぁ。音源を確保しようと思ったらそれこそ「正攻法以外」で行くしかないかもしれない。抜け道なんていくらでもあるだろうし。でも、好きなアーティストのCDなら、やっぱりきちんとしたブックレットがついていて、アートワークも施された作品を持っておきたいし。そうなると「音源としては聴かない(聴けない)けど、作品として持っていたいから買う」って事になるんだろうなぁ。

そういうのってさ、すんごいバカげた事だと思わない?ホント、単純にバカだと思うよね、ああいうのを考えるヤツは。

Silverboy: まあ、実際にはCCCDを「拒否する」というのはなかなか難しいけどね。何か、結論があるのかないのかよく分からないけど、問題の所在はかなりはっきりした気はする。

mine-D: そうだね。「あんな事やってちゃダメだろ」という結論には達しているとは思うんだけど、作ってる側が動かなければどうしようもないもんね、こればっかりは。いくら意見を言っても状況がまったく改善されないんじゃ意味ないし。ま、レコード会社には「もっと消費者の意見に耳を傾けろ」という事は強く申し上げておきたいです。

色々なところに話が飛んだけど、面白い話ができたね、なかなか。

Silverboy: いや、今回もどうもありがとう。僕は好きなアーティストの最新譜がCCCDになって、自作のコンピレーションCDが作れなくなったりしないようにして欲しい、ということだけ願っております。

じゃ、また、次のテーマも考えとくわ。

mine-D: うむうむ。頼みます。おれも考えておくしね。じゃ、今回もありがとう。お疲れさまでした。また次回もよろしく。

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